「3月のライオン」、漫画が大好きなので実写映画化には複雑だったんだけど、まあ見ないわけにもいかないだろうと行ってきた。
前後編の映画を映画館で見るのは初めてなので、本当はもっと後編が近くなってから見ようかと思ってたんだけど、どんどんレビューが上がるのでネタバレ見る前にさっさと行くことに。
割と評判良さそうだし、期待して行きました。
で、感想。
「やっぱり羽海野チカには追いつけないか」
以下、ネタバレありでつれづれ感想。
神木隆之介はさすが。
最初に画像が出た時には心配だった。
イメージは合ってるけど、神木隆之介が実際に高校生だった頃も見ているから、やっぱ21歳だな大丈夫かな?と。
でも最初に神木くんが部屋を出て歩き出したとき「あ、高校生だ」と思った。
基本的に無口な子なのでセリフも少ないところを表情と立ち振る舞いで零ちゃんにしか見えなかった。
そして、走る走る走る。
原作でも走るシーンが多いけど、それをいれることで、若者なんだなーって納得させてくれる。
で、心配だった、有村架純の香子。
原作だと香子と後藤のエピソードは途中で放置されてるけど、映画ではメインになっていて香子がメインヒロインになっている。
まずはそこがどうなんだ?と思う。
零にとって孤独を表すものが香子で、それを変えて行く、独りじゃない温かさを与えてくれるのが川本三姉妹なのだから、メインヒロインは川本三姉妹であるべきじゃないだろうか?
あくまでも前編だからとはいえ、回想含めて香子多すぎ。
人気の女優をキャスティングしたという政治的事情なんだろうか?
そして多い割に良いかというと‥‥‥。
予想通り合っていなかった。
炎のような女の子だからこそ、凍りついたような零ですら振り回されてしまうのに、そんな強さが全然出ていない。怒鳴ればいいってもんじゃない。
有村架純のイメージってどこか垢抜けない、でも性格は良さそうってもので、それが見た目にも表れている。
そんな今までのイメージを覆したいのだろうし、セクシーなランジェリーを見せたりとかしているんだけど、余計に違和感がある。
あんなランジェリーをつける娘があんなナチュラルメイクはしないでしょ。
イメージに合わない役をやる演技力がないのなら、メイクから何から何まで香子になるべく気をつかうべきなのに、それもさせられないくらい事務所の制約が厳しいのか?
うーん💧
そして、幸田父 豊川悦司。
白髪にしたり、太ったりの 努力はあれど、1番似合わない役なんだよなー。
幸田父は、一見普通の温厚ないかにも『お父さん』な感じの人が、中は隅から隅まで勝負の世界で生きる男だから余計に厳しさが感じられる訳で、豊川悦司には真逆の役なんだよね。
あと15才若ければ後藤の方が合うと思うのよ。
そして、みんな期待のキャスティング、島田開の佐々木蔵之介。
全体には良かったんだけど、なんか所々に生々しさが出て、島田八段の枯れた感じ、飄々と達観した感じが弱いかなー。
そういう人が勝負の場では全開でギラつくのが勝負師感を出すんだし。
そして二階堂の染谷将太。
うーん、やっぱり特殊メイクはやめてほしかった。
顔に肉がなじんでなくて、不自然なんだよね。
二階堂のふくふくして愛くるしい憎めない感じが全く出てない。
「聖の青春」の松ケンとまでは言わないし、原作ほどじゃなくていいから、自前で太った人が良かったな。
髪型もザンバラのおかっぱでカツラ感丸出し。
あと、二階堂のボンボンらしい育ちの良さが出てなくて、言葉遣いの問題かなと思った。
なんか荒いというか、下品?
声がガラガラだからかな?
ボンボンらしさがあの突飛な行動の数々を憎めなくさせてるのに。
あとのキャストはわりと良かった。
林田先生は高橋一生違うなーと思ってたけど、気の抜けたところがすごく出てて流石でした。
宗谷名人はもっと妖精的な人がいいと思ってたけど、島田八段との対局はまさに神様の子供だった。なんか顔も妖精に見えたよ。一瞬だけど。
川本三姉妹は良かったんだけど、出番が少ないよ。
内容としては、原作と変えたところで気になる点がいくつか。
零が川本三姉妹と知り合うのが話が始まってからで、原作と順番が違う。
変えるのはありだけど、その結果の無理が出てる。
あかりさんが酔いつぶれた零を拾ったとき、飲ませて置いていった怖い先輩がスミスと一砂になってしまっている。
あの2人は面倒見のいい先輩達のハズなのにそんなことをされたあとも普通に付き合っているのはおかしいだろう。
その後そんな2人を美咲さんのお店に連れて行くのもおかしいし、そもそも銀座のクラブにあかりさんが高校生の零を誘うのはどうなのか?
そういうところはしっかりした人のはずなのに。
そう、あかりさんは若いながら一家を背負うしっかりものなのに、いくら若くてガリガリとはいえ初対面の人間に留守番させるほど抜けた人ではないのだ。
あの留守番エピソードは三姉妹と知り合ってしばらく経ってからのものなのに、使いたいから無理につなげて入れた感しかしない。
元々原作では零が川本家に馴染むまでにかなりの時間がかかっている。
それだけ零の孤独は深かったのだ。
それを本当にゆっくりゆっくり、遠慮なく、でもキチンと距離を計りながら近づいて、零を溶かしてくれたのに、エピソードを適当に拾った結果、あかりさんはただの無神経な人になってしまった。
話の辻褄が全然あってない。
それから零の子供時代の回想がずいぶん増えているけど、あれは必要なのかな?
特に気になったのは、子供の零が香子にキツく当たられてわんわん泣くシーン。
あんなシーン原作にあったかな?
この物語の零はあんな風にわんわんは泣かないはずだ。
そこで感情を発散できないのが零らしいところじゃないのか?
キャラクター取り違えてると思う。
追加シーンで良かったのは島田と後藤の対局でオヤツかじりながらガン飛ばし合うところ。
あれはこの物語らしかった。
そう、映画で1番納得いかないのは、ユーモアのあるシーンがほぼ無くなっていたところ。
そもそも羽海野チカの魅力がそこなんだから、切るのはちがうでしょ。
本当にギリギリまで将棋というものに自分を追い込んでいる棋士たちの孤独や葛藤を容赦無く描く一方で、それだけ真剣だからこそ、クスッと笑えることがあったりする。
川本三姉妹側も辛いことはあるけれど、ずっと辛さに浸ってるだけじゃない、日々を暮らして行くのに笑ったり、楽しいことはそれはそれであって、生きるってことは両面があるのだと、それを描き出してるから羽海野チカの作品は魅力的なんだ。
その一方をバッサリ切ってしまうのは、わかってないとしか言いようがない。
それの問題が1番出てしまったのが二階堂だ。
そもそもキャラクターとしては笑いどころを多く担っていて、その合間に熱さや真剣さが見えるから魅力的なのに、これではただの変な人だ。
だから、リムジンで零と将棋を指すシーンが笑えないし不自然だし、意味がわからなくなってしまう。
まだ原作は終わっていない、登場人物もエピソードも多い話を無理に全部入れようとしたのが間違いなんじゃないだろうか?
学校エピソードをがっつり切ったぶん、林田先生がどうでもいい感じになっちゃってたから、いっそ全部切るとかね。
前に予告を見て、ひなたのイジメ問題まで入れるのかとビックリしたけれど、
追加キャストで川本父に伊勢谷友介が発表されたのには更にビックリした。
お父さんエピソードまで入る時間あるの?
あくまでも零が主役である以上、人生の師の林田先生と将棋の師である島田八段は外せないけど、川本三姉妹か香子かはどちらかに絞るべきじゃないのか?
前編が香子、後編が川本三姉妹なんだろうけど、結果として描き方が浅い。
特に香子は原作にあるエピソードはほとんど使っちゃったと思うけど、あとどーするの?
期待していったぶん、ガッカリは大きかった。
でもそれは私が原作好きだからなのかもしれない。
逆に原作知らない人はどうなんだろう?
だいぶブツ切りエピソードで展開わかるのかな?
羽海野チカの魅力、原作の凄み、製作陣が本当にわかってるとは思えないんだよね。
表面だけすくった感じだ。
まあ、どちらにしても後編も見には行く。
見ないってほどは悪くはなかった。
予告で川本父の伊勢谷友介が見るからにサイコパスぶりを発揮してて、いかにも妻子捨男で期待出来そう(笑)
どう決着つけるかも気になるし。
あと、ちょっと下世話なネタですが、幸田の妻役の女優さんを見てビックリした。
俳優さん長くやってると大変だね。
追記
どこかのレビューで、高橋一生キャスティングするなら宗谷名人がよかったなって言うのをみて、ストンと納得したー!
いいよね!高橋一生の宗谷名人‼︎
加瀬亮より美形感あるし。
メガネも似合うよー。
で、加瀬亮を林田先生にすればいいんだ!
フツーの気のいい人感がぴったりだ(笑)