温泉とテレビが好きな私の日記

誰かに気を遣うことのない、思った事をそのまま書いてみるところ。

映画「台風家族」を見てきました。たった3週間でも、公開出来て良かった…

公開2日目の7日土曜日、レイトショーで「台風家族」を見てきました。

映画の情報が出た時に、「おー、このキャストたちならそれだけで面白そう〜」と思ったのですが、まあ色々ありましたよね。
当初の6月公開予定から3カ月遅れで何とか公開にこぎつけたのは、色んな人が頑張ったからなんだろうなぁ。
3週間限定公開で円盤化も無理ということなので早目に見に行こうと思って行ってまいりました。

自分はめったに映画を観に行かないんですが、今年はわりと行っていて、「台風家族」で7本目、見た中に「青の帰り道」「麻雀放浪記2020」「引っ越し大名」そして「台風家族」とまあ色々ある映画が多くて、それはこのタイミングで見ないと見れないかもというのがあったのもある。
映画は関係者が多い上に撮影から上映まで1年くらいは普通だから、なにかあったら見れなくなってしまうということを思い知らされる。
大変ですね。

「台風家族」を見に行ったのは、先週とは違うシネコン
元々大々的に公開するタイプの映画ではないけど、事情もあるから公開館が少なめ。
スクリーンも小さなとこでしたが、空いてました。んー?あまりレイトショーって好まれないのかしら?自分は時間を得したみたいで好きなんですけどね。
せっかく公開出来て期間も少ないのにこんなガラガラで心配ですよ。
で、感想を色々。ちょこちょこネタバレもあります。
この監督の作品は「箱入り息子の恋」だけ見てます。
あとはザックリしたあらすじのみの知識で。

ある年の8月18日、栃木の銀行に強盗が押し入り2000万を奪って逃走。
容疑者は近くで葬儀店を営む鈴木一鉄。妻と強奪した2000万と共に行方不明になる。
10年後の8月18日、両親の葬儀をあげ遺産分割をするために4人の子供、小鉄、京介、麗奈、千尋が久しぶりに実家に集まってくる。
あの日なぜ父親はそんな事をしたのか、そして今どうしているのか、久々に会った兄弟達が明かしていく。

まずは強盗シーン。
そしてそれを引っ張らずマスコミに囲まれる長男小鉄(草彅剛)。
もうこれでつかみはオッケーという感じだった。明らかに草彅剛ではなくなんかダメそうな人がいた。すごい。
これだけでこの映画いける!と思った。

まずはもう、出演者がみんないい!
素晴らしいですよー。
草彅剛はもちろん外さないと思ってましたが、他もさすがです。
MEGUMIなんてはすっぱなオンナをやらせたら日本一では?
明らかに男にダラシない感じを出しつつも可愛げがあって「うん、これはモテるな!」って感じでいい!
尾野真千子はちょっと天然なおっとりさんというこのところのイメージとは違う役なんだけど、その外し方が可愛くて。
あと良かったのがMEGUMIの年下の彼氏役の若葉竜也
なんか見覚えあるような?と思ったらチビ玉三兄弟なのね。最近は映像作品に出てるようですが、バカなのに素直でMEGUMIにべた惚れでって感じが上手くて。
草彅と尾野真千子の娘役の子は演技初なのだそうだけど、こういう抜けた親の元で育ったクレバーで大人びた子っていうキャラがハマってて上手下手じゃなく存在が良かった。
中村倫也は末っ子のバカさと甘えた感がいい!
そしてね、新井浩文ですよ!
もうー、なんであんな事したかな!
やっぱりいいんです、俳優としては。
元々ヤンチャな役が多いから、存在は知っていてもあまり見た事なくて、「真田丸」が初めてちゃんと見たかもというくらい。
で、北川景子主演の「フェイクニュース」でウェブニュースの編集長をやってたんだけど、それがすごい良くて。
今回は兄弟の中では勉強も出来て、事業を成功させてっていう社会的には一番マトモな役。
それが違和感なくできて、そして兄 小鉄への複雑な思いとか出していて上手いんだよー!
彼のおかげでこの映画が大変な事になってしまったけど、でもこの役は確かにいい。
困ったものです。

典型的な昭和の親父の藤竜也が事件を起こし、そのせいで元々「とっても仲良し!」という訳でもない兄弟達も疎遠になって、それがある1人が策略して10年後に失踪した両親の葬式を出してケリをつけるため集まる。
そこでのやり取りでお互いの本音がだんだん出てくるのだけど、そのひとつひとつが「あーわかるなぁ」って感じで染みる。

3番目の子であるMEGUMI新井浩文の次男京介を「京ちゃん」て呼ぶんですよ。
長男の小鉄が「お兄ちゃん」なので区別で名前で呼ぶの。あるある。
そもそも、父親が一鉄なので長男は小鉄。が、下は結構歳が離れてたり、男2人の後の女の子なので千尋とか麗奈とかしゃれた名前で、それに長男 草彅が文句を言うとか。
そういう「ありそう」なエピソードの積み重ねがこの鈴木一家にリアリティを生み出していて、「父親が強盗して失踪」という普通はないエピソードなのにとても身近に感じられる。

まず小鉄が妻と子を汚れた軽自動車に乗せ実家に来るんだけど、一発で曲がりきれず切り返して入る。これで「小鉄はほとんどこの家に車で来た事ないんだなー」「あまり余裕のある暮らしじゃないんだなー」ってわかる。
京介はタクシーで乗りつけてそこそこ羽振りが良さそう。
麗奈は喪服をサッサと脱いで下着が見える服装に着替えちゃうとかユルい感じ。
そういうエピソードの積み重ねもいい。
こういうところは「箱入り息子の恋」の監督だなーと思いました。
どうってことない普通の出来事を割と淡々と描いているけど、それで色んな事が分かってくる。

今回の集まりを企んだのは千尋なんだけど、その理由がまた今時の頭弱い若者って感じで、その頭弱い感じが中村倫也が上手いし。
家を売って残るお金が大体800万。
遺産としてはさほど高い額ではないけど、小鉄は何とか独り占めしようとして京介を怒らせる。このくらいの額でもめるのがまた生々しい。
遺産の件で一旦決裂してもうダメかと思うけど、そこに新たな登場人物が来ることで、そもそもなぜ父親がそんな事をしたのかを考え始める。
「ケチで卑怯だ」と兄弟皆で最初はボロクソに言っていた父親だけど、家を調べているうちにだんだん分かってくる父親の行動の理由が、お約束なんだけど、実は子供や妻への愛情ゆえだという事が分かってきて、そして決裂しかけた兄弟達も結局は家族なんだという思いが重なって、あの日の父親の行き先を突き止めようと台風の中、皆で家を出発する。
ここがね!カッコいいんですよー!
兄弟4人と小鉄の妻子、麗奈の彼氏、そしてある事実を抱えてきた女性、あれこれ揉めていたこの8人がついに同じ気持ちで動く、それが雨の中家を出て行く時に1人づつストップモーションになるんです。
この時の顔がみんな凄くいい!
夜の嵐の中で暗いのがまるでハードボイルドなモノクロ映画のようで「おお〜っ!」って思いましたよー。

この後台風の中で起こるのは、冷静に見れば突っ込みどころばかりなんだけど、なんかいいんです。そこを超えているというか。
パワーで乗り切っちゃってる感じが逆になんか好きです。
ラスト、台風が通り過ぎるのと同様に皆の気持ちもケリがついて、次男京介の一言で未来への希望も感じる終わり方で良かったな。

ストーリーの主軸は小鉄と父親 一鉄の関係で、折り合いが悪いままで、でもやっぱり嫌だけど似ていてっていう息子のモヤモヤが、見てる方が恥ずかしくなるほど伝わってきて、ついつい自分の家族のことを思ってしまった。
思うツボですよ(笑)
ちょっとしたシーンまで「あー、なるほど」って思えて目が離せなかった。
ものすごく出来がいいかっていうと違う、アラも多い映画なんだけど、「結局、家族めんどくさい、でも捨てられない、やっぱり愛おしい」っていうのが全力で伝わってくる魅力的な作品だったです。

それにしても、本当に俳優 草彅剛は凄い!
SMAP時代後半からアウトロー役は多かったけど、今回はカッコ良さのない役なんですよ。
ズルくてしょーもないことしか出来ない小物で腕っぷしも弱い。
それが一目で分かるのが凄かった。
弟達と取っ組みあいしてすぐやられちゃうんだけど、やる前から「こいつ弱い」ってわかるの。
昔「ぷっすま」で金沢ロケで地元の人に声かけるのを引きで撮っていたんだけど、立ち姿がスッとしていて明らかに普通の人じゃない、スターだったのでびっくりしたことがあった。
失礼ながら草彅剛ってバラエティだとダメダメだし、芸能人としてさほど美形という訳でもないと思っていたのに、立ち姿がただ者じゃなくてやっぱりスターだって思ったんですよ。
が、そんな「スター」はかけらも無くて、あと今までの役で割とあった「アウトローだけどカッコいい感」も全くない。
いったいどうやってそういうオーラ的なものを出したり引っ込めたりするのか、サッパリ分からない。凄いなぁ。
あー、ホントもったいない!もっと俳優 草彅剛を使って欲しいなー。
色々あるけどね、単純に使わなきゃもったい才能ですよ。損失だよねー。

裁判が決着つけば、円盤化の可能性も出てくるかもしれないけどそれは当分先だし、3週間のうちにできればたくさんの人に見てほしい。
もったいないよ、このキャスト並べてみるだけでもお金払う価値はあった。
楽しい映画だったです。