温泉とテレビが好きな私の日記

誰かに気を遣うことのない、思った事をそのまま書いてみるところ。

「凪のお暇」第1話 辛くてぶっ刺さるけど、憧れの生活だ〜

今期ドラマも今のところさほど「これはいい!」とガッツリ食いつけるものもなく、それでもまあ興味あるものを淡々と消化。
そんな中さほど期待していなかった「凪のお暇」を見た。

あー、これはきっと「私」の夢のドラマだ。

主人公凪は、色々押し殺し空気を読みながら必死でキラキラOL生活を送っている。
ある時、同僚女子や恋人慎二の自分を軽んじた本音を知って心が折れ、会社を辞め布団ひとつ抱えて郊外に引っ越し新しい生活を始める。

原作は「この漫画が凄い 女偏」で賞も取っている漫画だそうで、設定だけ見ると確かに最近流行りの感じではある。
でも、ありがちな感じではあるけど、だからこそ共感する人は多いんじゃないかと思う。

冒頭、会社でひたすら空気を読み、周りに気を遣いSNSをチェックする凪に思わず「そりゃ疲れるよ」と呟いてしまう。
同僚女子にいいように利用されているのにうっすら気がつきながらも、いつか社内の人気者慎二と結婚して見返してやるんだという望みも、ズルいとは思うけどそれ以上に分かるなぁと思う。
関わる相手を選べない場所で生き抜いていくには綺麗事だけでは無理なんだよね。
大手企業に勤め、素敵マンションに住んで、人気者の彼氏がいても、凪が無敵ヒロインではなく自分と近いものを感じるのはそういう人としての小ささとか生々しさがあるから。
だから、凪がついに折れてしまった辛さが見てるこちらにもストレートに伝わるのだ。

そしてやってきた郊外のアパートで、ボロいながらも風通しのいい様子に凪がやっと息を吹き返したのが気持ちいい。
会社のシーンではなんとなく硬い色合いだった画面が、この風が通るシーンではふんわり柔らかくてこちらまでホッとした。
正に新生活が始まるなぁという開放感があった。

凪とは理由は違っても、大抵の人が生きづらさを感じたり、今いる場所がしんどかったりした事があると思う。
そして、何もかも辞めてリセットしてしまいたいと思った事もあるはず。自分もそうだ。
だけど、ほとんどの人は現実に生活をしていく事を考えて冷静になって、なんとか折り合いをつけて生きていく。
だから、凪のように何もかも捨て「お暇」をもらうという事はそのほとんどの人の夢の生活なのだ。
だからきっとこのドラマはぶっ刺さる。けれど惹かれてしまうんだ。

そしてこういうドラマチックでないドラマこそ、演者が上手くないと成り立たない。
このドラマは出演者が安定の上手さで何も気にせず入り込めた。
始まる前は原作とイメージ違うとだいぶ叩かれていたけれど、自分は原作読んでないのもあって全く気にならず。
凪の黒木華は凪の押しの弱いところ、けど多少のズルさのあるところをきちんと出していてピッタリだった。
原作で「実は美人で巨乳」という設定なのに合ってないとブーイングだったけど、それを知らなければ、同僚の派手め美女たちにいいように使われる大人しめ女子としてしっかりハマっていた。
「美人で巨乳」という設定はおそらく慎二が「あっちの相性がいいから付き合ってるだけ」とほざいていた事の裏付けにするためなのではないかと思うので、この先そうでなくてもさほど困らないんじゃないかと思う。

恋人慎二の高橋一生は原作の「28歳」設定と歳が違いすぎると叩かれていたけど、28歳とまで言わなくても明らかに実年齢よりはるかに若くて生意気な営業マンの雰囲気が出ていてさすがだった。
このところ落ち着いた役が多かったからなおさら違いがはっきり見えた。
責任ある仕事を受けられるようになって、押しの強さを上手く使って「俺できるだろー」ってイキってる20代後半から30代前半のまだ挫折を知らない根拠のない万能感、的なものがビシビシ出ていて笑った。凄いなー。
そして同僚に好きな女の事を素直に言えず「相手してやってるだけ」とアホな見栄を張ったらそれを聞かれて、なのに全く謝り方が分からず上から言ってさらに嫌われるというバカさを、ギリギリ「そういう素直じゃないとこかわいいかも?」と思わせるラインで演じて見せる。
うーん、これは高橋一生でないと難しいかもねー。

謎のお隣さんゴンの中村倫也は、本来のソフトな雰囲気がバッチリ。
初対面の女性へいきなり距離を詰めるのは下手にやるとドンびくだけなので、「なんかステキかも…」感を出していて良かった。

意外だったのは上の階のおばあさん、というかばばあ。
こういう役を三田佳子が引き受けるのかー。
なかなか面白い。

日々何もかも投げ出したい、と思いながら出来ずにいる自分の、これはできなかった夢を凪が叶えてくれているのだから、この先もちゃんと見なくては。
そしてきっとその先はほっこりした休息なんだなと思えるような、いい気持ちのドラマだった。