温泉とテレビが好きな私の日記

誰かに気を遣うことのない、思った事をそのまま書いてみるところ。

「相棒18」第4話「声なき声」……う〜ん、ひしひしと衰えを感じてしまう…。

「相棒」はもうシーズン18、すでに毎年秋冬の恒例行事と化しております。
なので基本的には全部見てますが(録画ミスとかはたまにある。今シーズンから配信初めてくれたのはありがたい)、とはいえ「めっちゃ面白いー!」とは言い難いものが……。

シーズン18では1、2話が前後編だったので第4話までで3エピソードですが、どれも既視感がある上に以前のものと比べると明らかに出来が劣るという、ね…。
1、2話は初回や最終回スペシャルでやりがちな壮大な事件!と見せかけてのさほどでも無いオチというありがちパターン。
仲間由紀恵木村佳乃といった準レギュラー組の顔見せに無理やりな展開もお約束。
3話は子役活躍回というこれまた定期的に入るネタ。子役の子は素晴らしかったけど、これまたオチはイマイチ。子供店長ゲストの「BIRTH DAY」にはとても及ばない。

で今回の4話。
見終わってなんだか落ち込んでしまった

「相棒」もここまで劣化してしまったのかー。
以下ネタバレガッツリで哀しみを語る。

厚労省職員 片桐の転落遺体が見つかり、特命の2人は現場でジャーナリスト 中川に遭遇。フォトス楓子の知人だという中川と話をした右京は、彼が最近調べている遊具での死亡事故に着目、遊具の設置業者を調べ始める。一方、冠城は片桐が所属していた過重労働撲滅特別対策室、通称「カトク」を訪ねる。

…といった感じで、「過重労働」「外国人労働者」「女性差別」「ジャーナリストの矜恃」などなど、いかにも「相棒」っぽい時事ネタを入れ込んだエピソード。ツイッターでは「『ボーダーライン』っぽい」と書かれていたり。
が、伝説の「ボーダーライン」にはとても及ばない、ツッコミどころ満載の凡作でした。

まず、特にフリもなく特命の2人が事件現場に現れる。それにモヤる。
特命には捜査権がないというのは重要な設定なので、毎回事件に2人がどう関わるかがツカミとして大事。
情報漏洩役の鑑識米沢さんがいなくなってからは、偶然第一発見者になるというパターンが多くてそれはそれでなんだかなぁと思っていたけれど、その関わり方が展開に関係してくる事もあるのでいつも注目している。
普通に現場に現れてそのまま普通に捜査をするのであれば一課と変わらない。特命には特命らしい関わり方があるのだ。

そして、事件の細部の描写がありきたりで雑。
転落死した片桐が靴を履いてなくて「自殺か?」と考えられるが、そこから落ちたはずのビルの屋上に靴がなく他殺として捜査が始まる。
結果として実は自殺で、他殺に見せかけようとした人物が靴を隠したのだが、いまだに「屋上に靴を残して飛び降りる自殺者」っていうエピソードを使うのがなぁ。そもそも本当に靴を残して飛び降りる自殺者っているのかしら?
靴を履いてない片桐の足を強調していたので何か意味があるんだろうと見ていたらこんな昭和のネタとは…。
靴下が5本指ソックスだったので、そこが大事かしら?とじっと見てたら全然関係なかった(笑)

事件解明のきっかけになる小学校の遊具の事故も甘い。
搬入されて1年ちょっとの遊具で事故が起こり、それが学校が定期点検を怠ったのを隠していたのが発覚して問題になる。
いやいや、いくら定期点検してなかったとしても設置して1年ちょっとで死亡事故が起こったら、今時はまず遊具の安全性を疑うよね?
そんなの敏腕ジャーナリストじゃなくても右京さんじゃなくても気づくって。甘いなー。

片桐が所属する「カトク」の上司は女性で、そこに外国人労働者の過重労働については調査するなと代議士(遊具の業者と癒着していたというお約束設定)から圧力がかかり、さらに調査する特命を止めるよう刑事局長にも圧力がかかる。
この「圧力」ネタもよく使われる。使うなとは言わないけど使い方は考えて欲しいなー。
大臣になった事もない一代議士の圧力に刑事局長が屈するのか?とか、偉そうなわりに厚労省への圧力へ自ら来るんだ?とか描写がありがち。

そして、肝心のなぜ片桐が自殺したかと言う理由が全然納得できず。
上司が代議士から圧力をかけられたので、自分が相談受けた外国人労働者の過重労働問題を言い出せず、しかしその件で自殺者が出たことを掴んだ中川から自分の持っている遺書を提供してくれるよう言われて板挟みで死んだ、と言うことらしい。
はぁ?としか。こんなので自殺の理由になる???
確かに実際にはふらっと自殺する人はいる。けれど事件物のドラマで彼がなぜ死んだかが鍵になる話でこんなふわっとした自殺理由???
まだ全然解決の余地あるじゃんよー。
「ボーダーライン」で死んだ柴田のあのリアルな追い詰められ方を見ていた視聴者としては「なんだそれ?」としか言いようがない。
こんなの取りあえず上司に相談すればよくないか?
上司は圧力に負けず筋を通そうとする人物として描かれてるのだし。
ちなみに、村木厚子氏をモデルにしてる感じなのがまたベタです。
預かってる遺書を中川に提供しないのも、立場上の守秘義務で断ればいいだけだし。

そして、あきらかに何か隠してそうな中川の秘密もガッカリ。
犯人ぽく描いてるのはミスリードだと思ったけど、結局、自分が片桐を追い詰めたと苦悩して記事が書けなかったというだけ。
えっ??そんな事?
逆に記事のために何かを見殺しにしたというならまだしも、人としての良心が邪魔して記事が書けないってそんなに責められる事なの???
確かにとても「敏腕ジャーナリスト」のリアクションではないけどさ。

さらに中川のかわりに代議士の不正を暴いた楓子が、記事で中川を「ジャーナリスト失格!」と糾弾するけれど、だからそれってそこまで責められるほどの事なの?
何かをつかんで記事にしなかったから(しかも一番の証拠は手に入れてない段階で)ジャーナリスト失格なら、日本にいるジャーナリストなんて全員失格じゃないの?
そして犯罪を犯したわけでもないのにジャーナリスト辞めるの?しかも記事にするの?
意味がわかりません。

さらに過重労働の末に自殺した外国人労働者がわざわざ日本語で遺書書いていたりとか、片桐の自殺を目撃し靴を隠した人物がなぜそこにいるのかさっぱりわからないとか、ご都合で甘い事件設定にめまいがしそうでしたよ。
今時のネタを入れ過ぎてまとめられず、ミステリーとしても不出来。「相棒」の基本設定もわかってない。
「相棒」も落ちたなー……。
思わず脚本家を調べたらまだ「相棒」2本目の人だって。あー、前の刑事局長の話も微妙だったなぁ…。
ラジオで別の脚本家が「相棒はそれぞれこういうの書きたいですって持ち込んで書く」と言っていたけど、この人もそうだとしたら完全に力量が足りてない。
いかにも「相棒」っぽい物を書こうとして大爆死。
いくら「相棒」歴が浅い脚本家とはいえ、こんな脚本によくOK出したなー、プロデューサー他スタッフ陣。
……。

「相棒」は神戸くんのいたシーズン8、9あたりがピークで、カイトくんの辺りは厳しいなと思っていたけど、まだ下が出るとは思わなかったよ。
やっぱり「杉下右京」というキャラは大変魅力的だし、それぞの相棒のキャラもいい。
これだけしっかりしたベースがあるから色んなパターンの話が入って面白いのに、脚本のベースを上げてもらわないと辛いなぁ。

「相棒」はもう自分にとって見るのは当然なものなのでがんばって欲しい。
凄く哀しかったよー。