温泉とテレビが好きな私の日記

誰かに気を遣うことのない、思った事をそのまま書いてみるところ。

「スカーレット」〜40話 喜美ちゃんの状況が生々しくてなかなかツライ

丸熊陶業の食堂で働き始めた喜美ちゃん。
しかし仕事は簡単で物足りない。そんな時、火鉢の絵付けを見て心を奪われる。
絵付け職人が辞めた事を知り、自分がやりたいと照子から社長に頼んでもらう喜美ちゃん。
そして新しく来た絵付けの深先生やそのお弟子さんに優しく教えてもらい、初めての絵付けに夢中になる。

……もちろん「スカーレット」はここ最近のお花畑朝ドラではないので、この先にはしっかり現実が待っていた。
「お、キミ才能あるね。ぜひ働いてほしい!」なーんてことは絶対にない。そこは信頼してた。
喜美ちゃんは「仕事」のつもりだったが、深先生達は社長のお嬢さんの友達の「絵付け体験」と思っていた。
仕事にするにしても一人前になるまでに長い修行期間が必要(しかも無給)と知り打ちのめされる。
ガッガリして元気のないまま食堂の仕事をしていると、同僚の奥さん達に、食堂の仕事は娘の友人(しかも以前直前で採用キャンセルしている)のために用意したらしい事、喜美ちゃんが仕事をつまらないと思っている事を見ぬかれた上で、「仲良くやろうな」と言われてしまう。
ああ、恥ずかしい……。

いくらしっかりものの喜美ちゃんとはいえまだまだ世間を知らない18歳、どんなであれ仕事をすればお金がもらえると思っていたり、社長のお嬢さんの友人という立場が特別な事もわかっていなかった。
落ち込むよねー。
でも、ここでちゃんと落ち込んで恥ずかしいと思う喜美ちゃんを描くからこのドラマが信頼できるんだよね。
ドラマ好きとしてはホント、意味わからない「主人公無双」ほどイラっとする事ないですから!
無給で働く根性は充分あるだろう喜美ちゃんだけど、家の事を考えればそれすら贅沢な事で許されない。
しかしこの先喜美ちゃんは修行のいる、お金になるかわからない陶芸の世界にいくのだ。
いったいどうやって問題をクリアしていくのか、どんどん興味が湧いてくる。
楽しみー。

とは言え、先生とお弟子さんたちがやたらと職人風吹かすようなタイプではなく、喜美ちゃんの勘違いを丁寧に大人として説明してくれるようなまともな人達なのは新鮮だった。
これまたベタな朝ドラ展開だと、若くて女な喜美ちゃんをめちゃくちゃバカにする方向に来たりするのでね。
そして食堂の奥さん達も若くして働かなくちゃならない喜美ちゃんのことちゃんとわかっている。
ちゃんとした、でも立派過ぎないリアルな大人が出てくるから、あの両親を持つ喜美ちゃんが世間を学ぶことができる。
喜美ちゃんはしっかりもので賢いけど、最初から何でもできるスーパーマンではなく、周りの大人からひとつひとつ学んで行くのが「人生」って感じでいい。

そして言われていたように、悪い人は出てこない。けどだからツライ。
両親もダメだけどいい人でだから喜美ちゃんは振り切ることができないし、食堂の奥さん達もいい人だけど、喜美ちゃんの自分の道を見つけたい思いは理解できない。
特に最近の朝ドラでは珍しいほどの父親のダメっぷりはさすがとしか。
娘に愛情たっぷりで憎めないけど、一切娘の気持ちを理解しようとしない。娘が自分と違う人間という発想すらない。リアル過ぎる。
長女に依存し過ぎてそれが次女を傷つけている事にも気づかない。本人は愛情に差があるつもりはこれっぽっちもないのだけど、子供側は違う。
このお父ちゃんのダメっぷりを見ていてふと、自分の父親を思い出した。
さすがにこういうダメ親父ではなく、ちゃんと仕事をしていて暴力を振るうわけでもないのだけど、言うことが子供っぽくて筋が通っていなかったりする人だった。
子供心に「どうなんだ?大人気ない」と思っていて、一度母親にそれを言った事がある。
すると母親は「子供のころに(父親の)お父さんを亡くしてるから、父親がどういうものかがわからないんだよ」と言っていた。
当時はピンと来なかったけど、いまこの常治お父ちゃんを見てるとわかる気がする。
この時代に丁稚奉公に出ていたという事は実家も貧しく子供の頃から働いて甘える相手もいなかったんだろう。
だから父親としてのありようがわからず、常治は常治なりの愛情をめいっぱい出しているのだろうけども全て的外れなのだ。
そしてお嬢さん育ちらしいお母ちゃんは男性に逆らうという概念をそもそも知らずに生きてきたんでしょう。
そういう、それぞれのキャラクターの背景まで伝わるように描かれいているのはとてもいいドラマ。
しかし、お母ちゃんはそんなお父ちゃんのことをわかるからいいとしても娘達はしんどいだろう。
「スカーレット」は親子関係一つとってもなかなかにシビアで重い現実を突きつけてくるから面白い。
そしてその重さとバランス取るようにコメディパート的なやりとりがあって、俳優さんがみな上手いからそれが楽しめて朝向きの軽やかさが出ている。センスがいいなぁ。

シビアといえば、人生の先輩達も万能じゃないのもいい。
子供の頃あれだけ大きく見えた草間さんは、妻との関係にケリをつける勇気が出ずに小さく見えていたし、働く女性の先輩のちや子さんはあれだけの働きぶりでも「女は腰掛け」と打ち砕かれてしまう。つらい。
でもそれぞれちゃんと立ち直り前へ進む。それがまた喜美ちゃんの指針になる。ステキな関係だ。
滋賀まで来てくれたちや子さんのかっこいいこと!
実家で一切弱音が吐けない喜美ちゃんがあんなに泣いてグチをこぼせる相手がいてよかったよ〜。
いつもニコニコ大人な喜美ちゃんが泣きながら「絵付けをやりたかった」とこぼす。
そしてそれを見てそれぞれ気がつくお母ちゃんと直子。
ちや子さんがいてくれたから事態が動いた。ありがとう、ちや子さん!
そしてへこたれずやりたい事に向かうちや子さんの姿は、きっとそのまま未来の喜美ちゃんの姿なのだと思えて、この辛い状況を視聴者も乗り越えられる。

コメディパートといえば、お父ちゃんが勝手に進めた縁談相手がノンスタ石田
いやー、こういうバランス上手いなー。芸人の使い方がくど過ぎなくていいです。
普通に演技も上手くてびっくりしたけど、そういえば舞台とか映画とかやってるんですよね。
40話だけとかもったいないかも。
朝から笑ったー。
そして信作はどこ向かってるのー⁉︎出るたび笑いをかっさらうのも勘弁してください(笑)

喜美ちゃんの現実はまだまだ厳しいけど、喜美ちゃんが少しずつ、本当に少しづつだけど一歩一歩歩んで行くのがたまらないです。
喜美ちゃんはなにやら決意してそれをお母ちゃんに伝えようとしている。
それは深先生の元で学びたいということだろうか?こういうとこ意外な展開を入れてくるのが「スカーレット」なので、明日が待ち遠しい。
うんうん、毎朝楽しいなぁ。