「カムカムエヴリバディ」全112話完走しました!
100年の物語を3世代のヒロインを通じて描くという挑戦的な試みで、世間的にはなかなか評価が高く「歴代でもトップクラスの傑作」という声も見ますけど、う〜ん、自分はイマイチだったなぁ。
単純にドラマとしての作りが良くないと思う。
大吉さんが「今は朝ドラも考察するのねー」と言ってたけど、それこそが元凶。
伏線張り&回収に労力使いすぎて本筋が荒い。
そもそも元は150話だったものが土曜分が無くなり、さらにコロナ禍で短縮して112話。
それで3世代を描くのだからただでさえ大急ぎ。それなのに考察ネタに労力振りすぎてちゃそりゃ足らないよ。
最大のやらかしはやはり「アニーは安子なのか」問題。最終週まで引っ張るから肝心の親子の再会と雪解けが数分で終了。なんだよそれ。
ひっぱりで飽きてしまった友人がくれたメールの「もうアニーが安子でいいよ」という投げやりな感想が笑った。
そもそも最終週まで正体を隠した結果「アニーは安子なんだろうなぁ」と推測がついてしまう。別人だったらもう話をまとめる時間が無いもの。
そして「アニーは安子ではない?」とミスリードさせるためのいらん伏線が山盛り過ぎて、そんな時間あったら本筋ちゃんと書け!とイラッとしてしまったわ。
とくにひなた編は駆け足が過ぎて、しかも安子とるいの再会にも時間を取られて薄かったー。
最終週はとにかく説明セリフばかりで、これで伏線回収って言われても💧
だから考察ドラマ嫌なんだよね。
飽きっぽい視聴者を惹きつけるために考察ドラマがつくられるのは理解してるし、一つの手法としてありだとは思う。
でも余計なミスリードを入れ込んだ結果「あれはなんだったんだ?」と破綻するものも多い。
最近だとそれで出来悪くなったのが「天国と地獄」で、加減が絶妙でよく出来てたなぁというのが「最愛」。
「天国〜」は主演2人の入れ替わり芝居の上手さで最後まで見れるものにはなっていたけれど、ミステリーとしてはキャラの性格がブレブレだったり、謎解きが曖昧なところが残り過ぎてて見終わって残念な気持ちになった。
一方で「最愛」は、うまくミスリードしつつやり過ぎず、終わってみれば確かにこの人しか犯人は有り得なかったという筋の通った展開で最後まで作り上げられ、試聴後感のスッキリしたものだった。
「カムカム〜」は「天国〜」と同じ印象をうけるのだ。
ちなみに秋元ドラマは面倒だから見ない(笑) 出来不出来の前に考察「のみ」を楽しむドラマはあんまり興味ないかな。
「カムカム〜」はメインテーマである「人の生活が継承されていく事」についての描き方が物足りなかった。
親子2代を同じ俳優に演じさせるとか、ドラマとしての手法は面白くもあったけど、それじゃあなぜヒロインは3人必要だったのか。
リアルな事を言えばスケジュールのきつい人気俳優を使いやすいという事なんでしょうけども、3人並べるために展開が無理があった。
それに時代も変わってヒロインのキャラも変わるので、一つのドラマとしてのつながりが薄くなってしまっていた。やはり主人公というのは大事な核なんだなと再認識。
年下の俳優が親世代というのを極力避けたので、3人の居住地を岡山、大阪、京都と変えて周りの人物を入れ替える。
けれど一方で繋がりを描きたいので無理な偶然の連発。共に岡山育ちのるいと錠一郎が「偶然」大阪で知り合う。しかも狭〜い町内で。
京都に越せば、岡山で商店を経営していた知り合いのあかにし家と「たまたま」同じ町内に住む。
京都で出会ったアニーにひなたは何故か岡山のライブのチケットを簡単に渡そうとする。しかも前日。
この手のネタの繰り返しで作劇の雑さが目立ちすぎる。
まだ、ラジオを聴かせてくれたお母さんの孫とかビリーのエピソードくらいの大きさなら「ドラマだし」とスパイスにもなるけれど、メインテーマで無理な偶然を繰り返すからどんどん気持ちが醒める。
そして最大のネックは安子とるいの別離だ。
やはりどう考えてもここで別れる理由が無理矢理すぎる。
ヒロイン役の年齢を考えると安子と大人るいは並べられないからということにしか見えない。
そして肝心の「継承」についても、最終週の数分で安子とるいが簡単に和解してしまったので「血が繋がってりゃ結局OKなのかーい!」とつっこんでしまったよ。
これは算太の最後の時にも思ったのだけど、このドラマの「継承」って基本的に血縁によるものなんだよね。血が繋がってればさえいれば縁が続く、なんでも許される。
例えばるいにとって本当の親より親らしかったクリーニング屋の竹村夫妻は、あれだけの関係があっても、50年ぶりに現れて、しかも不義理ばかりのアニーより扱いが軽い。
繋がっていくものが「血縁」ばかりで、だから戦災孤児で天涯孤独の錠一郎は結局るいと結婚するだけでなく、子供を持つという事が重要だった。
恩人で親代わりでも、定一は結局自分の実の息子や孫との生活の上で生を終え、亡くなっても錠一郎はそれを「話に聞いている」だけで、看取るとかそういった行動には出ない。
ひなたは60歳まで独身で子供を持たなかったが、だからその代わりに弟の桃太郎が結婚し子を持ち、安子、るいの「血縁」を繋げている。
途中「結婚して子供を持たない生き方もある」というセリフを言わせているけれど、ひなたの2人の友人も子供を持ち、ひなたのかわりに桃太郎が子供を持つということで「結局は血縁で子孫を残すことが継承には必要」という展開になってしまっている。なんだか陳腐だなぁと思う。
と、なんだかなぁと思いつつも全部見てしまったのは、やはり出ている俳優がよかったから。
上白石萌音の良さが初めて分かったし、深津絵里やオダギリジョーが上手いのを再確認した。
しかしやはりなんといっても早乙女太一。
どうしても一般の人には触れにくいジャンルの仕事だし、プライベートのネタばかり知られてる感じの人だった。
それがこんなにいい俳優だったとは。
今回実年齢より10歳くらい下と20歳くらい上の演じ分けという無茶な設定にも関わらず、メイクに頼らず演技でやっていたのはちょっと感動した。型芝居をやりこんでる強みだろうか。
深津絵里の10代演技もただ容姿が若く見えるからだけではなく、動きや声の出し方まで変えていたのはやはり舞台で鍛えた賜物か?
そういえば深津絵里の若い演技、歳の近い人間からすれば「すごい、若ーい!」って感じだったけど、実際の20歳前後の人からみたらどうなんでしょうかね?同世代に見えたのかしら?
あとは目黒祐樹がよかったー!
子供の頃はお兄さんの松方弘樹と区別がつかなかったんですけど(笑)
普通に「勇」として存在していて凄いなぁと。
ベテラン侮れない!
まあブツブツ言いながらも完走しましたので、そういう意味では制作チームの思うツボ(笑)
朝ドラの容赦ないところはどんだけ思い入れがあろうが1日置いたらすぐに次作が始まるところで、もう本日からは「ちむどんどん」です。
脚本家が「マッサン」の人なので王道の地味でも安定した作りのドラマになるのかな?
さてさて。