「エルピス」全10話、ということで来週もう最終回です。
え?ホントに来週最終回???…と確認してしまうくらい、9話までがしんどい展開だったんですけど?
ミステリーの形を取ってはいるけれど、主軸は犯人探しではない。
早くからそれらしく見せていたように、おそらく真犯人は本城彰、松本死刑囚は冤罪なのだ。
実は松本が二重人格で、とかいうようなどんでん返しは無いだろう。
でもそのシンプルなはずの事件を表に出すまいとする大きな力があって、それに対して「じゃあ貴方はどうするのか?」「自分はどうすべきか」を問いかけるのがこのドラマなのだ。
メディアの人間が正面切ってメディアの裏を描きメディアのありようを問いかける。
それがこのドラマのヒリヒリさせて目が離せないところだ。
9話で、岸本がつかんできたスクープを腰が引けて扱えない大洋テレビのメイン報道番組。
結局、週刊誌に流すがそれも阻止される。
去年やってた「和田家の男たち」でも同じようにテレビで扱えず週刊誌に情報を流すエピソードがあった。
脚本の大石静はその前に「知らなくていいこと」で週刊誌報道ネタをやってたし、今のマスコミの「結局文春しか書けない」というのはかなりの闇を抱えていて、それに興味を持っている業界関係者っていうのが多いんだなぁと思った。
「エルピス」でもそこを真っ向から突っ込んでいて、果たしてこれが後1話で決着がつくのか、全く見えない。
そしてこのドラマがずっとモヤモヤするのは「正しいことをしたい」という、報道人として以前に人間としてごく普通だろうという事をした人間が端から皆排除されているところ。
かつての村井も、岸本も、そして大門の娘婿は命までが奪われた。
浅川が無事なのはたまたま出役だったから。
この流れを止めてくれるのだろうか?ドラマなら当然だと思うのに、相手が強大過ぎて本当に先が見えない。しんどい。
そもそもメディアは何を守っているのか?
今年の重大事件と言えば安倍元首相の銃撃事件があるが、あの報道を見ていると、安倍晋三というあきらかに日本のトップにいた人間ですら、探られてたくないことを隠すためには見切られるんだなというのがわかってしまう。
もう死んでしまった人間の無念を晴らそうなんて誰も思ってない。それより自分の周りの火の粉を払う方が大事。大手メディアは突っ込まない。
旧統一教会の問題をずっと追ってきた紀藤弁護士やジャーナリストの鈴木エイト氏を、岸本や村井を見てると思い浮かべるけれど、現実では希望があるように見えなくて落ち込む。
でも、でもきっとドラマはタイトルを回収してくれるのだと思って見続ける。
そうしたら現実も少しは動くのかもしれない。
しかしまあ、確かにこれをやられてとくにTBSは赤っ恥だよね。なーにが「報道のTBS」なのかと。
かつての社員だった山口敬之の件を彷彿とさせるエピソードも入って、面目丸潰れ。
それでもドラマで言うように、組織は個の集合体なので、その中でも良識を持ち続ける人がいると言うことを信じるしかない。
登場人物は皆、清廉潔白ではない生々しさがあるからリアリティがあるのだけど、やはり岸本役の眞栄田郷敦はいい。
そもそも当て書きで書いていたものの、年齢的にその人が合わなくなって郷敦になったそうだが、すごくいい役をもらったなあと。
初めて演技がいいと思った。良くも悪くもこれまであんまり印象に残らなかったんだよね。
そして斉藤の鈴木亮平。
村井にこの先にいくのかと止められて果たしてどう動くのか。やっぱり闇があることなんか承知だったんだろうけども、そこからの斉藤がどう判断するのか、今の鈴木亮平だといい意味でわからない。どっちもありそう。
毎週見終わってからずっとぐるぐる色々と考える。そうさせているだけでこのドラマは成功なのだろう。
けれども、さらにここまできての最終回が驚かせてくれるものだと期待して、月曜を待つ。
あー、緊張する。