第39話、奈津が人妻になった。それを見る糸子も否応なしに大人になっていく。
クリスマス、繁盛した生地屋を見て「今こそ洋服の時代や」と独立して店を作る事をお父ちゃんに告げ殴られる。
それでも数ヶ月後、覚悟を決めたお父ちゃんに店を譲られついに独立を果たす。
店は中々軌道に乗らないが、周りに勧められた川本勝との縁談も決まり、それを機に紳士服と婦人服両方を作る店としてオハラ洋装店繁盛、従業員も増える。糸子は2人の娘を産み、一方で世の中は戦争の影響が少しずつ濃くなっている。
6年ほどの出来事を2週ちょっとでどんどん描いていてビックリした。「早っっ!」と思うのだけど物足りなさは感じない。逆にこのドラマが何を描こうとしているのかがよく分かる。
沢山のキャラクターが出てきて、しかも皆生き生きと少しのシーンでもどんな人間かわかるように描かれているけど、それでもこのドラマの主人公は糸子で、糸子が自分で選ぶ人生を描こうとしてるのだ。だから周りから勧められた縁談はサクサク進んじゃうし、特に問題なく進んだだろう新婚からの長女妊娠まではアッサリだ。そこが潔い。
糸子が成長し、働き、大人になっていく一方で、お父ちゃんや神戸の祖父母は老いていく。それは辛い事だけど、人生とはそうやって進んでいくもので受け入れなくてはならない。そしてそれをどう受け止めていくかがその人の生き方。
クリスマス、稼ぎ家族を支える糸子はお父ちゃんに独立を告げる。仕事の能力はどんどん上がっても、言うタイミングを測れないのがまだまだ子供。そして自分の衰えを娘に突きつけられ怒鳴り殴るお父ちゃん。
もっとチビのときは吹っ飛ばされたけど、糸子が大きくなったのかお父ちゃんの腕力が落ちたのか、泣きながらも踏みとどまる糸子。そしてお父ちゃんの衰えを分かっていても告げられなかったおばあちゃんとお母ちゃんが糸子に謝る。もう誰もがお父ちゃんの時代は終わった事を分かってるのに、お父ちゃんですら分かってるのに言えなかったこと。
岸和田に洋服の波が来て、クリスマスケーキが普通に買えるように、小原家にも時代が流れてるのかぁ。ツライ。仕方ない、いやそうなってかなくてはならないことなんだけどね。でもみんなツライ。
神戸の松阪家も代替わり。1年前ミシンを調達してくれたいかにも社長のおじいちゃんはもう隠居老人のようで、そこでも糸子は時の流れを感じる。こういうところが本当にうまい。
年に数回会うくらいの祖父母だけにガクッと老いたのを感じるのだけど、夏におばあちゃんが風邪ひいていたり、糸子は時折感じていた。
家族というのは日々の積み重ねなんだとちゃんと描かれている。
テーラーの先輩の勝が婿養子に入ってくれるという縁談もこの時代らしさが出ててなるほどなぁと思う。確かにこの当時はこんな縁談が普通だったんだろう。長女で洋裁店をやってる糸子に婿養子OKのテーラー勝。泰蔵にいちゃんの嫁の八重子も美容師見習いだったから、髪結いの息子への縁談。しかし、祝言当日初めて会った旦那が泰蔵にいちゃんとか、どんな大当たりなんだろー(笑)
糸子にとっても、仕事してるとこがいいと言ってくれ、怒りっぽい糸子に対していつも安定して上機嫌の勝、しかも婿入り、恋とかじゃなくても確かにこういうのも愛情と言えるんだろうなぁ。
そして奈津との友情なのかわからないけど切り離せない縁。芸者の駒ちゃんが不思議に思うように、仲が良いのか悪いのか、いわゆる女の子同士のお友達じゃない。
でも「祝言はうちで挙げなさいよ(意訳 結婚おめでとう)」といういかにも奈津らしい言葉、相変わらず無茶な仕事をして自分の祝言に遅れる糸子にキレながら迎えに行き、歩けない糸子を背負って連れ帰り、自分の白無垢を貸して「馬子にも衣装(意訳 綺麗やで)」と言いすてる奈津とちゃんと分かってる糸子に、「あー、幼馴染ってやっぱり特別なんだなぁ」と笑ってしまう。
丸顔で童顔な尾野真千子とクールビューティな栗山千明がルックスから糸子と奈津にハマってて、ドラマのキャスティングの大事さを実感する。子役のチョイスも良かったし、こうお互いの人生の節目節目にきちんと存在していて、この先一生の付き合いなんだろうなぁって分かる。そうそう、こういう風に視聴者に伝えていくのがドラマだよねぇ。無駄な説明がなくて気持ちいい。
そして経営者、母親と状況は変わりパワーアップしても根っこは変わらない糸子の安定感(笑)やっぱり洋服作るのが好きで、商才はあるのに金勘定は弱く、ついつい無茶をする。
それは結婚して従業員を雇い子供が出来ても変わらない。だからといって従業員にはちゃんとするし子供にも愛情がちゃんとある。そういう糸子だから、みんなに好かれてなんとかやってけるのがいい。主人公は欠点はいくらあってもやっぱり魅力的でないと。
特に子供を預けながら働く糸子の姿はいいなぁと思った。大人しい長女に比べ、きかなくて預け先に困る次女を勝の実家に預けるけれど、心配でたまらなくなり会いに行ってしまう。けど、里心がつくと困るから会わせてもらえず帰ってくる。
そうなんだよねー、子育てってこんなもんなんじゃないのかなぁ?「子供を預けてまで働くなんて可哀想」なーんて戦後の価値観が今だにはびこってるけれど、そもそも商売屋のお家なんてこうでしょ。誰か手が空く大人が交代でみたりで育ててきて、でも親がちゃんと愛情持ってて真っ当に働いてる姿見せてれば子供だってちゃんと分かってまっすぐ育つ。あくまでも自分のやりたい事をガツガツやる糸子はお母ちゃんとしてもとってもカッコいいよ。
しかし、先に上がる従業員に「直子(次女)の面倒見せたろか!」とキレる糸子には笑った。直子の面倒は罰ゲームなのかい!(笑)
時は昭和15年、少しずつ戦争の影響が出つつも庶民はまだそれなりに暮らしている。
これから先はどうなるのだろうか?
宮藤官九郎が「朝ドラで昭和物なら第二次世界大戦、現代物なら東日本大震災をどう描くかを考えなくちゃいけない」と言ってたらしい。
そうだなぁ、本当にそうだ。そこはちゃんと描かないとなぁ。
ま、「カーネーション」に対しては期待しかないけれどもね!
ひとつ残念なのは、サッカー日本代表発表のせいで1日1話の日が出来て放送がずれてしまっている事。
週6話だから、1日2話放送、3日で1週間ぶんでちょうど良かったのに、昨日分は金曜日回で終わり来週に回ってしまった。
なんかなぁ、サッカー興味ないし「カーネーション」再放送の方がずーっと大事な身としては迷惑しかないわー。
区切りよく見たいのに。
まったくもう!