今週はほぼ顔見せしかしていなかった八千草薫が本格的に登場。
石坂浩二達よりひと世代上、戦前の映画界からの伝説の女優、あだ名は『姫』。
この人に限らず『お嬢』とか『マロ』とかあだ名で呼びあうのがいかにも昭和の芸能界っぽくていい。
大物芸能人がトーク番組で思い出語ったり、深夜の昔の邦画で見るような芸能界ってこんなだったんじゃないかなーって見てる人間が想像する世界を、倉本聰は期待通り、いやそれ以上に濃〜く描きだしてくれる。
今みたいに「コンプライアンスがー」なんていう芸能界じゃなく、光が強いぶん闇もある、『ザ・芸能界!』
まるでおとぎ話のようだけど、実際にそこを生き抜いてきただろうベテラン俳優たちがこれだけ揃えば説得力しかない。
確かにその光も闇も強い世界がこの時代の地続きにあったんだなぁって感じが楽しいのだ。
戦前は映画、戦後はテレビで活躍して、その美しさと気品でみんなの憧れだった姫は、お年を召した今も変わらない。
たまたま値打ちがあるかもしれないものを手に入れてしまい、
「値打ちがあるなら欲しいかも」
「いやいやそんなのはしたない」
と2つの感情が行ったり来たり。
そんな姫を八千草薫が可憐に上品に演じてる。
この人はいつ見ても「可憐」という言葉がぴったりだ。
欲に迷いながらも、結局『姫』として美しく生きることしかできない不器用な上品さに主人公も心惹かれる。
こういう人だからいつまでもみんなの憧れのお姫様なのだ。
そしてそんな姫の辛い過去を主人公は聞くことになる。
戦時中、特攻隊の慰問に駆り出され深く傷つく。
関わった人間、誰もが誰かを思ってやっただけなのに、哀しい出来事になってしまう、それが戦争というもの。
3週目にしてラブコメの皮を被りつつも、倉本聰、本気を出してきたな。
この世代のことを物語にするとき、切っても切り離せない戦争の話。
この危なっかしいご時世に、戦争を知ってる世代が戦争がどんなもんか教えたるぜーと、声高に言っても聞きゃしないだろうから、ドラマ、それも戦争物じゃない普通のドラマに入れ込む。
なかなかストレートに入れ込んでるのにうっとおしくないのは、ここまでのストーリーとちゃんと繋がっているから。
戦争があったのは別の世界なんかじゃない、この世界の少し前にあったんだぞ、と。
ベテランの腕だなぁ。
週の後半、他にも認知症とか重いエピソードが入りつつも、ネタをぶっこみ視聴者を引き込む手法も相変わらず。
石坂浩二に「水戸黄門ってホントにいたのかしら?」と聞いたり、
「湾岸テレビから月9の脚本依頼が。あの局は視聴率が取れなくて大変」的な、おいおい架空になってませんけどなネタをちょいちょい挟む。
やりたい放題だ。
元気でたくましい老人達を見てるのがこんなに楽しいものだとは。
まだまだラブコメも継続中。
引き続き展開楽しく待ちましょう。