医療物乱立と言われる今クール、さすがに全部は見きれないのですが、今のところ放送分を見終わったものが、「病院で念仏を唱えないでください」、「トップナイフ」そして「アライブ がん専門医のカルテ」の3本。後の3本も録画はしてますが、見ないで消しそうなものも……。
そんな医療ドラマの中、期待に反して今のところ1番面白いのが「アライブ」。
キャストも地味だし、これといった派手な煽り文句も無い。でも、それがいいんです。
医療物というとやっぱり派手な手術シーンが目玉だったりしますが、「アライブ」の主人公、松下奈緒演じる恩田心は腫瘍内科医。がん患者のエピソードなので治療の一部としての手術シーンはありますが、それをするのはバディになる木村佳乃演じる消化器外科医の梶山薫。普通に腕はいいのだけど、内科医の心と入念な打ち合わせをし、よく検討した上で手術をする。
この治療の仕方がドラマの地に足ついた感じを現している。決して「成功率1%をやってのける天才!」みたいなものではない。
そう、自分は医療物もそれから事件物も好きだけど、さすがに「天才で変わり者主人公」に疲れてるんだなと「アライブ」見ていて気づきました。
今回消化済みの後2本も面白くなくはないのだけど、どちらも主人公が天才だったり変わってたり、そして仕事のために私生活を犠牲にしてたり、トラウマかかえてたりとちょっとデジャブ。あと登場人物が多くてガチャガチャして見づらい感じもある。
「アライブ」は腫瘍内科というドラマでは珍しい内科。医者もベタな天才ではないけど、どう治療するのかを調べて考えて、というのがリアルでいい。
今はガン=死という時代ではないから、患者もただ悲劇の主人公的ではなく、医者とちゃんと話して協力して乗り越えようとする。
かなり取材したということでちょっとしたところが「なるほどなー」と思えるのもいい。
1話で抗がん剤治療中の患者の爪の付け根が黒くなっていて、ちらっと映るだけだけど「副作用かな?」と検索したら、やっぱりそうなるそうなので調べてるなーと感心した。
極端な悪人も出てこず、難しい上役はいるけど、メインの腫瘍内科のメンバーが普通の人なのもいい。特に木下ほうかが普通のちゃんとした上司なのが新鮮。
2話で男性の乳がん患者という珍しい患者が出て、手一杯だから逃げようとする藤井隆に木下ほうかが「君が行って」と指示をするシーンがある。そして診察になると男性患者が「男性の先生でホッとした」っていうんですよ。
99パーセント女性患者の乳がんの診察で心細い男性患者にさらっと男性医師を行かせるなんて、普通にいい上司で医者だなーと思って、このドラマのこういうところが好きだなぁと思いました。
描写が丁寧でリアルな分、ネットではがん経験者や身近にいた人は「辛くて見れない」と言う意見もあったけど、こういう内容ではそういう反応も覚悟の上だと思う。
その上で丁寧でいいんだと思います。
一方で、心は夫が事故に遭い意識不明のまま、新しくきた薫は実は心の夫の手術をミスして、どうやら贖罪の気持ちで心に近付いたらしい。
この設定いるのかな?と1話では思ったのだけど、心自身が患者の家族であり、そして遺族になる事で、自分が見る患者の気持ちもよりわかるのだろう。
各話のがん患者エピソードとだんだん絡んできて浮いてる感がなくなってきていい感じ。
3話ではもう治療が効かなくなり、緩和ケアに移行を考えている患者とその家族が登場、一方で心の夫ももう長くないという宣告を受ける。それぞれが遠くない「家族の死」どう受け入れていくのかが描かれていて、ついもらい泣き。悲しいけど、なるほどなぁと納得してしまった。
そして心の夫は亡くなり、この先薫がどうでるのかがまたポイントになるんだろう。
松下奈緒と木村佳乃は自分的に「美人だけど色気のない女優トップ2」なのですが、その色気の無さがこういう、仕事、生きること、というテーマにハマってていい感じ。
凄く熱心なファンが多いという立ち位置の女優さんではないから、出演者目当てでの視聴率アップは見込めなくても、その分好感度が高くてこういう内容にはいいよね。
この先は医療ミスの件で薫が追い込まれる事になるのかな?それが自分の夫のことだと知って心がどう出るかが脚本の見せ所でしょう。
脚本家は「刑事ゆがみ」の人なので信頼してます。間の作品は結構不評だったみたいですが、自分は見てないので気にしない!(笑)
こういう、正に「ヒューマンドラマ」というドラマがよく出来てるとなんだか嬉しいです。