今クールはベテランの女性脚本家のドラマが多くて、キャストで見るの迷っても脚本家で見る事にしたドラマが多い。
「僕らは奇跡でできている」もそう。
特別「この人が出るなら見なくては!」という人はいなかったけど、脚本が「僕の生きる道」シリーズの橋部敦子なので見始めた。
そして大正解。毎週しあわせーな気分で見終わっていい気分で眠れる。
ちょっと変わり者でマイペースな大学講師の一輝(高橋一生)が少しづつ少しづつ周りに影響を与えていき、周りの人間も一輝本人も少しづつ変わっていくお話。
まあ、ファンタジーと言ってしまえばそうなんだけど、でも「こうだったらきっとみんな生きていきやすいよね」という気づきがあって優しい気持ちにさせてくれる。
ガツガツ働く生き方ももちろんありなのだけど、そうは出来ない人もいて、それでもいいんだと思わせてくれる。
毎回ほんわりさせてくれるけど、7話のエピソードにはついうるうるきてしまった。
榮倉奈々演じる育実が院長を務める歯科医院で知り合った小学生の虹一は勉強が出来ず母親の涼子は周りの子と比べて焦っている。
絵を描くのが好きで一輝と森にリスを見に行きたいのだが、勉強を怠けていると思い込んでいる涼子は許さない。
そんな涼子に一輝は「虹一くんのすごいところ100個知ってます」と言うが取り合ってもらえない。
それでも何とか了承してもらい家に泊まった虹一に一輝は「虹一くんのすごいとこを100個あげるね」と言う。
結局、虹一が勉強出来ないのは光に感受性が強く、文字を読むときストレスがかかって頭痛がするためだった。
頭痛を怠けと思い叱っていた自分をダメな母親と落ち込む涼子に虹一は「お母さんのすごいところ100個言えるよ」とあげてみせる。
流れで育実と2人で夕飯を食べる事になった一輝。育実のすごいところ100個も言えます、とあげはじめる。
「時間を守ります。」
「歯の治療をします。」
「歯をきれいにします。」
「クリニックの院長です。」
…といくつも。
そして、
「会ったとき『こんにちは』と言ってくれます。」
それに対して育実は
「ちょっと待ってください。それって誰でもできることなんじゃないんですか?」
と問うが、一輝は
「誰でもできることは、できても凄くないんですか?」
と答える。
もうここでうっときてしまいましたね。
世の中しんどいことはいっぱいあるけどね、こうやってちょっとした一つ一つの事を認めてあげられれば生きていけそうな気がする。
どんな些細なことでもできることはステキなことだと誰かが、そして何より自分が思えればいい。
それだけで楽になれそうな気がする。
主人公の一輝は子供の頃から皆と同じようにできなくて、でも理科だけは得意で今は大学で動物について教えている。
はっきりは書いてないけど、おそらく発達障害があるのだろう。だからいろんなことが出来なかった。
けれど陶芸家の祖父と鮫島教授という一輝を理解し評価してくれる人達のおかげで今は「欲しいものはない」と言えるくらい楽しく生きている。
こういう理解者が無く苦しんでる人が現実にはたくさんいるだろう。だからちょっとでも凄いところを見てくれる人がいたら、と思わせてくれる。自分の身近にそういう人がいたら、そうしてあげたいと思わせてくれる。
そんな一輝と親しくなった虹一はやはり皆と同じようにできず、おそらく彼も発達障害なのだろうと思って見ていたら、目の問題と全く違うものだった。
ここで脚本にやられたなぁと思った。
最近は発達障害が注目されていて特集組まれたりと、それは理解されるためにもいいことだと思うけれど、何かと発達障害にもって行きがちなのもどうなんだろう?と思っていた。
今回の一輝の設定も正直安直と思わなくもなかった。けれど虹一は違った。人と同じように出来ない理由も発達障害だけでなく色々なものがあって、その人それぞれを見てそれぞれの対応が必要なんだなと思い知らされる。
ネットなんかで人を馬鹿にするのに「どーせ発達障害だろ」というような言い方を見かけて嫌な気持ちになっていたのに、自分もある意味大差ないのだと反省した。
やっぱり橋部敦子の目線は広いなぁ。
最近のドラマのヒット要因には「スピーディーな展開」「勧善懲悪的な爽快さ」がどうしても求められ、結果刑事物や弁護士、医者と同じような設定ばかりになる。
そういうのも面白いけど、そんな無理矢理な盛り上げがなくても、淡々と進むけれど、こんなに優しい気持ちになれるドラマがあるのはとても嬉しい。
視聴率はイマイチだけど、高橋一生はやっぱりうまいし、いいドラマなんだよねー。