第3話の衝撃がずっとぐるぐるしたまま迎えた第4話。
少年たちのいたずらから一転、発砲事件から始まる血なまぐさいお話。
真っ昼間の銀座での発砲事件、容疑者も被害者も逃走。
被害者は青池透子、2年前の違法カジノ摘発で逮捕された前科あり。
事件は組対が引き継ぐが、その事件に関わっていた桔梗隊長の指示で4機捜も捜査を続行する。
1億円を持って逃走する青池透子。その金はどこから手に入れ、そして彼女はどこを目指して逃げているのか。
もうね、このヒキだけでゾクゾクするんですけどもね、またも野木亜紀子のち密な脚本とさらに上を行く演出に驚かされる。既に何度も見返しちゃいましたけど、何度見ても、というか見るたびに新しい気づきがあってゾクゾクする。
ううう~~!たまらん‼
野木亜紀子の脚本は、いつも「今何が起こっているのか」をまっすぐ見ていて、それに対しての正当な怒りに満ちている。それがたまらなくかっこいい。
3話で語られた「分岐点」、誰と出会うか出会わないか、それは4話でも引き続き語られる。出会ってしまったことではめられ沈んだ青池透子。カジノに警察が踏み込んだ時の落ち着いた顔は「これで終われる」というものだったはず。
資格をとって、普通の企業で地味につつましく手取り14万円で暮らしていくはすだったのに、知らないうちにまた出会ってしまっていた。搾取される側はずっと搾取されるままなのだ。
そしてその正当な怒りのもとに任務を遂行するのは桔梗隊長。
元々は被害者だった青池を助けたはずなのになぜこうなったのかを突き止めようとし、違法カジノを通報したために狙われる羽野麦をかくまう。
冷静で優秀で心優しく力強い。
「アンナチュラル」でもそうだったけれど、野木亜紀子のお仕事ドラマはポンコツの役立たず、というありがちキャラを入れないのが気持ちいい。
桔梗隊長は言うまでもないけれど、伊吹、志摩、陣馬、九重、機捜4課それぞれちゃんと仕事はできる。「若手キャリアでしかも二世」というポンコツオチにされがちな九重も若くて頭でっかちではあるけれど、それはまあ世代的に当然の範囲で、ちゃんと動き考えて仕事をする。ほかの人間もそう。欠点もみせつつ仕事には真摯だ。
一見組織のことしか考えない人でなしに見える刑事部長の安孫子にしても、その立場としての正義をもって動いている。
自分は野木亜紀子のこういうところが好きだなと常々思っていたのでけれど、そういえば同じようなことを思うのが羽海野チカの作品だ。つらいことがあってうわ~っとなっていても、そういうときこそ仕事をちゃんとやってしまったりする。
「ツライ=何もかも手につかない=仕事できない」という単純な公式で人間は出来てないということをちゃんと書いてくれるから好きなのだ。
人間てそう単純に生きてはいないんだよと、いつもいつも言ってくれる。
やっと普通の暮らしに落ち着いたと思ったのに、気づいたら勤め先が暴力団のものになっていた。彼らに一矢報いようと汚れた金を横領する。それが気づかれ追われ、そしてもう自分は助からないと悟った青池は何かしたかった。そうして彼女が選んだのは遠い国の搾取される女の子のために寄付を送ることだった。
……あいかわらずの伏線回収の気持ちよさ!
前半での、伊吹がかつてタイガーマスクを真似てランドセルを送った話、ウサギが追い詰められると狼をも蹴り飛ばす話、その人間の本性を知るには生死がかかった瞬間をみるといい、そんな会話がきれいに回収されていく。
あああ、楽しい~。
そして、ドラマが半分すぎたくらいであっさり青池は死んでしまうという身も蓋もない展開なのに、最後にほんの少し彼女の希望が見えて、見終わったあとなんだか救われた気になった。ほんと素晴らしい。
まあ結局、ドラマがどう面白いかなんて書いても、1度見ればその面白さなんてすぐわかる。スピード感と情報量の多さ、なのに見やすく楽しめるのが野木脚本なのだから。
で、今回見て刺さったシーンをあれこれ言いたい。
なんと言っても志摩の狂気。
発砲犯を押さえたと思ったら別口がいて銃を突きつけられる。しかし顔色すら変えず銃口を握り相手を挑発する。
犯人を蹴り飛ばした伊吹のおかげで事なきを得るが、その伊吹にどういうつもりか詰め寄られるとはぐらかす。おそらく志摩は死ぬのが怖くない、というより死んでもいいのだ。
あああ、もうね、いい人じゃない星野源を見せようと企画してくれてありがとう~~!
星野源に限らず、小劇場系の人はどうしてもテレビでは出来上がったイメージの役をふられがちなのだけれども、「俳優・星野源」の引き出しはそんなもんじゃないんだぜ~と、毎回見せつけてくれてうれしい!泣きそう!
顔のパーツは小作りで(失礼!)一見無表情に見られるけれど、それは無表情を演じているだけで、志摩のように無表情の中にたくさんの感情を浮かべているのがたまらない。
さすが星野源~!ああ、かっこいい………。
青池が乗ったリムジンバスとそれを追う404のメロンパン販売車が高速を降りるとき移りこむトラック。なんだ~?と思っていたら、それが青池透子の希望だったとわかる。
降りていくバスと404と登っていく国際小包のトラックの対比に泣きそうになる。
なんて絵面なの……。
青池が手に入れた1億円を宝石に変えた宝石店の女店長。うすうす状況に気づきながら宝石を売り、汚い金を美しい宝石に変えた青池のことを痛快に思っている。こういうワンシーンだけの役にまで背景が見える。
3話から登場の羽根麦は、裏カジノを密告して暴力団に追われる女。3話で逃亡した成川のネックカバーと羽根麦のマフラーは追われる者の象徴だったのね。理由が真逆のような同じのような。
青池の残したツイッターならぬつぶったーの投稿。若い九重は新しい投稿が上にくるのを知っているから順番に読み青池の真意に気づく。逆に読んだほかのメンバーは警察に対する恨み言と読み取ってしまうが、本当は青池の希望だった。
確か去年くらいに横書きのコピーを上から読むのと下から読むので意味が逆になる広告が話題になったけど、それからヒントを得たのかしら。
青池の給与は手取り14万。ちょうどトレンドに「♯手取り14万」が入っているというタイミング。ほんとヒキが神がかる。
そしておそらく意識をなくす直前、国際小包のトラックに希望を見た青池のシーンにドンピシャではまる米津玄師の「感電」がもう泣く!相変わらず主題歌の使い方上手すぎ。
どのシーンも見返すと何度も新しい気づきがあって、毎回ゾクゾクする。
野木脚本ではキャストの名前もいろんな意味が込められていて外せない。
「青池透子」という美しく澄んだ名前にいろいろ思う。伊吹も志摩も名前の意味がだんだんわかってくるのだろうな。
今回はまた、機捜が追う新たな黒幕「エトリ」が登場。似顔絵がほんと誰にも似ていて誰にも見えない特徴のない顔で上手すぎる。この伏線と3話の男が絡んでくるんだろうか?
回を追えば追うほど謎が増えていくのに、見ていてすとんと入ってくるのだから楽しくてたまらない。
「MIU404」、やっぱりめちゃくちゃいい!