温泉とテレビが好きな私の日記

誰かに気を遣うことのない、思った事をそのまま書いてみるところ。

「MIU404」最終話  この世界のどこかに伊吹や志摩はいるんだなぁ

最終話「  」。

最後までサブタイトルにやられる日々だった。

伏せましたかー。やるなぁ。

 

久住のでっち上げテロに振り回される警察。404のメロンパン号が犯人に仕立て上げられ、混乱で通報が遅れて被害が出る。

そのうちの1人が、ドラッグを積んだトラックに跳ねられた陣馬さん。もう10日も意識がない。

あーもう、うどん物産展みたいになってるのが泣けるよね。一見暑苦しそうでも、実は冷静で優秀で大人な陣馬さんは皆に慕われている。そしてあれだけうざがってた九重くんが……(涙)このドラマの中できちんと時間が流れて、その時間関わり合ってきたメンバーがそれぞれのスイッチになっていく様子が染みるんですー。あの頭でっかちエリート九重がこんなに血の通った捜査官に育つんだよー。陣馬さん起きてー!この九重くんを見てください〜💦

 

そして、メロンパン号のデマも今まで関わってきた人達が火消しをしてくれる。

なんかこの前このドラマについて「従来の1話完結式の刑事物の枠で作られてるのが残念」と書いてる記事があって、思わず「こら、絶対ドラマ見てないだろ!」と突っ込んだけど、1話からのエピソードが何一つ無駄になってないこの流れを見て何にも感じないのかよー!と思います。

毎回の上手さにぞくぞくするのが楽しくて楽しくて。こういうの楽しまなきゃもったいないし。

 

久住にしてやられて思い詰める伊吹と志摩。

「正しくある」のでは久住を捕らえられないのではと葛藤する姿にハラハラする。

わかる、わかるよ、でもね、踏ん張って欲しいんだよー。

「刑事の自分を捨てても許さない」ガマさんに引きずられそうな伊吹。なんというか、綾野剛がお得意の危うさを出していてどきどきする。

他人の意見を聞いて久住に騙されたことを悔やむ志摩。警察がルールを守ることを逆手に取る久住のことをわかっていつからこそもどかしい。釈放されたRECに協力させ、警察にはできない手法を使う志摩。

ひねた見方すれば、ここまでこういうスタンスを貫いてきたこのドラマで、主人公2人が闇落ちなんて展開的にありえないとは思うんですよ。
なんだけど、それでも「もしや……」と思わせるだけの演技を2人を見せるものだからさぁ~。ガマさんがとりついたかのような顔を見せる伊吹、今までの冷静さから一転、迷いと弱さを浮かべる志摩。あ~もう、いい!(笑)

それぞれに踏み越えそうな伊吹と志摩を心配し止めさせようと奔走するのが九重なのが、何度も言うけど時間の積み重ねの関係性の変化が見えていいよねぇ。4機捜の誰が上とか下とかじゃなく、それぞれに影響しあってる関係。そして一番伸びたのが新人の九ちゃんだ。ううう、成長したねぇ!!もうフツーに感動。

そこにきて、志摩の本音を途中までしか聞かず誤解して拗ねて距離を取る伊吹という、意外にもベタな展開を入れてくるのが面白いよね。ここまで刑事物として新鮮なつくりだったからこそ効いてくるというか。
そしてベタと言えば久住と対峙してからの夢落ちというかバッドトリップ展開!!

さすがに賛否分かれていたけど、自分はここにこれ持ってくる度胸がけっこう好き。
正しくあらねばならない警察官として邁進してきていて、人間的にもそれに向いているはずの伊吹や志摩ですら、久住という悪夢のようなスイッチに遭遇したら踏み外してしまうことはありうるということを、こういう風に描くのね。
まさにメフィストフェレスである久住が、伊吹と志摩、それぞれの弱点をゆすってくるさまが恐ろしい。一人だったから負けてしまう。

けどね、けどね、それぞれ足りないから補い合うのが相棒なのよね!うう~エモいじゃ~ん。

そして真打登場、2人をバッドトリップから引き戻すのが陣馬さんの覚醒ってとこが~!チーム最高!!あわてて「陣馬おき」でLINE送っちゃう九ちゃんもかわいい。
目を覚ました2人はもう単独行動なんてしないよ~、絶対!熱いわ~。

拘束がガムテだとか、スマホ残してるとか、さくっと殺さないとかそういうご都合なところも自分はさほど気にならない。それだけ久住が慢心しているってことなんだろう。404の2人もたらしこむ自信があったのかもしれない。ドラマとしてもなによりここからのテンポ感が気持ちいいからね。
不本意な異動を受けざるをえなくなった桔梗隊長が、最後のチャンスにやっぱりちゃんとルールを守って動くのがまたかっこいいし。

 

そう、久住との追っかけっこが楽しい!

これぞ刑事物という盛り上がり。

あ、このときはいていた伊吹のシューズが「夜会」で大迫選手から綾野剛がもらったものなのね。
あのとき、星野源には高級とはいえバナナなのに、綾野剛には限定のシューズって格差ひどくない?と憤慨したのよね~(笑)せめてドラマにだしてくれないとね。一番の見せ場で持ってきましたね~。

伊吹は走って(いや~、何度見ても走りっぷりがかっこいい)、志摩は自転車、九重がメロンパン号でという連携がね、何度もわくわくする!

 

自分で傷を負い、警察にやられたとまた人をたらしこもうとした久住は、その目撃者役が自分の提供したクスリで使い物にならないというしっぺ返しをくらって捕まる。
こういうストレートをくらわせてくるのが野木亜紀子らしい。
野木亜紀子の脚本はいつも世間の問題にきちんと疑問を呈してくる。おかしくないか?と。そして犯した罪は己に返ってくるとちゃんと書く。それが爽快だ。

 

結局、久住は自分のことを語らず、正体はわからないまま。
そして時が過ぎ2020年夏、コロナ渦のなか404の2人は機捜として勤務にあたっている。
街にはマスクの人々が歩き、伊吹と志摩もそれぞれ、らしいマスクをして勤務に当たっている。

良かった、4機捜は存続したのね。きっとスパイダー班も健在よね。

無くなったオリンピックの象徴、ゼロ地点から今日もスタートする。

 

あー、なんてかっこいい終わり方!!

サブタイトル「ゼロ」、無くなったこと、でもここからやり直せること、そう、生きていれば何度でもチャンスはある。

コロナ渦でたくさんのことが無くなって、変わって、そうそう戻らないものも多いけれど、それでも404の2人は事件を未然に防ぐためにどこかで働き続けている。きっと陣馬さんも九ちゃんも桔梗隊長も。

一貫して容赦のない現実と残念な事件を描きつつも、毎回試聴した後の感触が明るいのはこういうことだ。人間は終わらないし、いつだってやり直せる。信じられる人達がいる。

エンタメとしてめちゃくちゃかっこいいなぁ。

 

4月以降のドラマのスケジュールがガタガタになって、そんなたくさん見てるわけじゃないけれど、自分が分かる限りコロナ渦の様子をちゃんと取り入れたのは「MIU404」だけ。しっかりと現実を描こうとしている。

4月にNHKでやっていたリモートのテレビ討論番組で、野木亜紀子は「作り手としてコロナを描かないわけにはいかない」と言っていた。東日本大震災についても、それで作り手も変わったとも言っていた。

ドラマで「今」を描こうとする事に真っ直ぐに向かっていて、だから視聴者に刺さるんだとしみじみ思う。

野木亜紀子はインタビューで「前のドラマで婉曲に書いたら伝わらなかったので桔梗隊長にはストレートに言ってもらってる」とも言っていた。

そういう真っ直ぐさがしっかりある上に、脚本も演出もエンタメとしての見せ方が出来てるからこんなにストレートで、でもめちゃくちゃ楽しめるドラマになったんだなぁと感動する。

 

震災といえば、久住が被災したのではというセリフもちらほらと入る。おそらくそれで何もかも失い、本人すら行方不明なのかもしれない。

それでも、それが犯罪を犯していい理由にはならないというスタンスは「アンナチュラル」と同じ。そして重大事件が起きた時にニュースやワイドショーで物語をつけて消費する事を、久住本人から否定させるという皮肉たっぷりのオチ。キッパリしてる。

俳優陣はもう隅から隅までよかったですが、さすがに最終回は菅田将暉にもってかれた感はありましたね~(笑)さすがです。

伊吹や志摩に誘いをかけるメフィストフェレス的な顔の時も、人当たりのよい兄ちゃんの顔のときも一切目の奥が笑ってない……からのついに捕えられ頭の傷を押さえられた時にふっと一瞬子供みたいな不安そうな顔になったと思ったら目がもう何も見ていなくて「閉じた!」って感じでビー玉みたいになったの、すごかったわ~。ほんとベストキャスティング!
主演コンビが薄味な顔なのに対して、はっきりした濃いめの顔立ちもいい対比になっていて、クルーザーでそれぞれと対峙するところの腹立たしさも抜群!
こういう若手人気俳優で悪役やるなんて珍しい、みたいな意見もあったけど、ここはそんなこと気にしないでしょ。松坂桃李もだけど、キラキラからえぐいのまでやらせるからこそスキルが上がるのをよくわかってる事務所だしなー。

なによりキャスティングを思いついた新井プロデューサー、ありがとう‼

 

そして、我らが星野源!いや~よかったわ~。
「いい人でない星野源を見たい」と言ってくれた野木さんありがとう!!
銃を構えて切れかかる星野源や、血まみれ死体になる星野源や、そういう新鮮な星野源を見れたもの~。
このところパブリックイメージに近い役が多くて、実はと~っても演技が上手いのにそういうのがわかりづらい仕事が多かったからなー。改めて演技が上手いのを堪能できました。ありがとう。

 

先週のオールナイトニッポン月火の「MIU404」祭り楽しかった~。
8話あたりで伊吹を見ていて「なんかルフィみたいだ」と思ったので、少年ジャンプを読んで役作りしたという話には納得。
プロヂューサーたちの「アンナチュラルに出ていた人は他の役で出さない」「この人出したいけど犯人だったからなー」という話は嬉しかった、世界観大事。出したかった人は誰かな~?あの人かな?と考えるのも楽しい。

さすがにパラビに入る気はないけれど、じ~っと待ってクリスマスにBlu-rayボックス買うから!オールディレクターズカット楽しみにしてます。

 

1週間たって、普通に次のドラマが始まった。見るつもりはあるけど録画してまだそのまま。

最終回を迎えて次の週に次作が始まるのって本来朝ドラくらいしかないんだよね。そのせいか気持ちが次に切り替わらない。Twitterで「♯MIU404 12話」のタグで盛り上がる人たちの気持ちがしみじみわかる。

今もきっと伊吹と志摩は勤務にあたってるんだろうなぁと普通に思ってしまう。
久住は黙ったままだとどうなるのだろうか?薬物の件だけならそう長い刑には出来なそうだけど、身元がわからないままだと裁判もできないのかな?
そんなことばかり考えている。

 現実問題、売れっ子ばかりなので続編は難しいだろう。でも、そんなこと考えてるうちに、ふっと続きが現れるような気もするから、きっと、いつか、と思いながらあれこれ想像していよう。

いいドラマだった、本当に楽しかった。ありがとうございます。