温泉とテレビが好きな私の日記

誰かに気を遣うことのない、思った事をそのまま書いてみるところ。

「いちばんすきな花」完走 この肯定の空気が心地いい

遅ればせながら、「いちばんすきな花」を全話見終わりました。

うんうん、なんかよかったよかった、と思ってしまいました。

 

すぐに見始めず、4話くらい放送されてから見出して、しかも5話くらいまではなんだかヒリヒリ痛くて、疲れて帰ってきた平日の夜にはなかなか手が伸びず遅れ気味ではあったものの、途中からドラマの空気が変わって見ていて心地よくなった。

そうして後半は毎日のように深夜見進めて、今では藤井風の主題歌がふと鼻歌で出てしまうくらいにひたっている。

 

空気が変わったのは美鳥ちゃんが登場してから。

4人がそれぞれの知り合いの話をしているうちに、それが同一人物であることに気づく。

美鳥ちゃんのこれまでには色々なことがあって、4人が出会った時期が違うため、それぞれが話す美鳥ちゃん像が随分と違う。

それでも、それぞれが美鳥ちゃんと出会ったことで何かを受け取り、それが今に繋がっている。

人との関わりというのはこういうことなのではないか、という話なのだった。

 

そう、このドラマは当初「男女で友情は成立するのか」というベタなテーマのドラマだと挙げていたけれど、それは単なるヒキであって、どちらでもある、人によるという身も蓋もない結論を出している。

友情がどうとかが大事なのではなく、人が人とどう関わっていくのかは、その組み合わせそれぞれで、4人でもあれば1対1でもあるし、友人とか恋人とか名前がつく場合もあれば、そういう呼び名の無い場合もある。

どんな関係でも影響を与え合うことはあるし、どんな関係でもいいのだ、ということを11話をつかって長々と描いていたのだ。

 

当初、「クワトロ主演」とうたうのに、別に群像劇でいいのでは?と思ったのだけど、見終わってみると、30代の男女、20代の男女、の4人がそれぞれで対になっていて、そこからいろんなパターンの組み合わせのエピソードが広がる作りが、これは群像劇ではなく確かに4人が主演なのだなと納得した。

面白い構成だった。

 

結局さほど大きいドラマは起こらず、1話で友人になった4人がわりと淡々と日々を進めて、最終回でも4人で友人のまま、多分これからも、という起伏の無さなのに、面白いのは構成の良さとセリフの細かさだと思う。

うーん、細かさっていうのも違うのか?

どーでもよさそう、かな。

 

4人ともそれぞれ生きづらさを抱えているのだけど、1話でウッときたほどにはツライ人生ではないのが見えてくる。

いい会社に勤めていたり、容姿がよかったり、人当たりが良かったり、友達がまったくいないわけでもないし、恋人も普通にいたりする。

ガチでぼっちの人間からしたら「贅沢いってるんじゃねー!」とキレられそうなくらいだ。

でもだからこそ、抱えている生きづらさが他人に伝わらない。ウッカリ話せば反感を買うだけだ。

そんなどこにも出せない思いを吐き出し合い「うんうん」と聞ける関係は現実には中々難しいユートピアだ。

だけど、椿の家を巣として過ごし、そしてちょっとだけ暮らした4人は、椿の家が無くなってもどこでも集まって4人でいられる。

こういう関係もありなんだよと納得させてくれる。

どうでもいいような会話をひたすら続けることで得られる幸せも生きていくのには必要なことなのだ。

 

もちろんドラマとして荒い部分はあった。

4人の出会い方とか美鳥ちゃんの存在とか、気になる人はそこで脱落しそうなものだ。

けど見続けていると、その力技の必要さもわかる。ストーリー展開が重要なのではなく、あくまでも関係性を描きたいドラマだからだ。

 

でも、その関係性を描くからこそのモヤモヤもあった。

20代組の夜々と紅葉がそれぞれ4話5話で、自分の人間関係の不具合と向き合う。

夜々は自分を溺愛する母親、紅葉はぼっち回避のために友人として利用した篠宮くん。

2人とも相手にずっと抱えてきたものをぶつけることで少し楽になり少し前に進む。

けれどそれをぶつけられた相手の母親や篠宮くんはそれによって傷つき、夜々と紅葉の抱えていたものを代わりに抱えることになる。

これは見ていて辛かった。

夜々の母親は確かに過干渉ではあるが、毒親というほどでもない。

だから夜々が上京して距離を取り、4人になって場を得たことで気持ちをはっきり言えるようになった。

夜々の辛さはものすごーくわかるのだけど、それをぶつけられる母親の気持ちはちょっとおざなりで、脚本が夜々の側だけを拾ってるなぁと思う。

 

同じく、紅葉の篠宮くんへのやらかしも、篠宮くんへのフォローが全く無く、最終回で出されたエピソードも、あくまでも篠宮くんが自分で傷を乗り越えただけで紅葉はなんにもしていない。

夜々と紅葉の20代組が、自分の辛さを乗り越えるために人を傷つけてそのまま相手をほったらかし、というのは若さでもあるのだろうし、ある意味生々しいのだけど、それでもなんか救われきれなくてモヤモヤする。

一方でゆくえと椿の30代組はやたらと老成しているところがあって、比較対象とはいえちょっとやりすぎかなーと思ったり。

 

あと気になったのは最終回で夜々が憧れていた同級生のムラサキちゃんと再会した際、結婚したと彼女に名字が変わったんだねというようなことを言うと、そういうのは古い固定観念、彼女は相手に自分の名字になってもらったと言う。

その際パートナーのことを「旦那」というのだ。

うーん、言葉に敏感な脚本家らしくない言葉選びだ。

昨今、パートナーの呼び方についてはちょくちょく論議になるのに、安易に「旦那」呼びかー。

確かに若い人には「旦那」「奥さん」が「夫」「妻」のカジュアルな言い方という捉え方をされてる印象はあるし、子供の頃からの友人にいきなり「うちの夫」という言い方がよそよそしい感じなのはわかる。

けど、ジェンダー意識が高く、平等に考えてパートナーに自分の名字になってもらったムラサキちゃんが「旦那」呼びか…。

そういえば赤田はパートナーのことをなんて言ってたかな?

細かいセリフまで気を遣ってるドラマだからこそ、こういうことが気になってしまうね。

 

俳優はみんな良かったけど、田中麗奈がステキな大人ぶりだった。

この人は主軸が映画なせいか気がついたらあんまり演技を見たことなかったな。

こんなに柔らかい演技をするんだなぁと 見とれてしまった。

あと出番は少ないけど、赤田の妻の田辺桃子が相変わらずいい。

今はサブキャラで出ることが多いけど、役柄が固まらず色んなタイプをサラッとやっている。

いまどきな感じだけど、ちゃんと対応力もある女性が普通にそこにいてよかったな。

 

ラストの藤井風の登場は賛否分かれてましたけど、自分は結構すき。

4人が出てきたところがいきなり舞台みたいになって、4人の4人でいることの本人たちにとっての大切さが浮かび上がって見えた。

 

色々いわれているけれど、善し悪しの前に好きなドラマだなと思えて楽しかったです。

多分また早い次期にこの脚本家のドラマが見られるだろうから期待してます。