温泉とテレビが好きな私の日記

誰かに気を遣うことのない、思った事をそのまま書いてみるところ。

「透明なゆりかご」 第3話 不機嫌な妊婦 重い話なのに後味が悪くない

今期ドラマの中で実は1番かもというくらいの出来の「透明なゆりかご」

決して楽しい話ではないし、NHKということでそう話題になる訳でもないけど、見ると揺さぶられるというか何かを思わずにはいられない。

特に3話の「不機嫌な妊婦」は見終わって色々と考え込んでしまった。

 

由比産婦人科の看護バイトで働くアオイ。まだ看護学生な上にぼんやりしてる彼女が怯えるのはいつもイライラと怒っている妊婦の安部。

看護実習で他の病院に行ったアオイは安倍の事情を知った。盲腸の手術から安倍の夫は脳死状態になり回復の見込みは無い。そのことから周りを信じられず何もかもに怒る安倍の気持ちをアオイは知ろうとする。

 

泣けてしまった。このどうしようも無さでいっぱいになってしまう感じがしんどい。

普通ドラマだと、患者側の話なら医療ミスを追求してあばくとか、医者側の話なら医療ミスの疑いを晴らすとかそんな分かりやすい展開になりがちだ。でも現実はそうじゃない。

安倍の夫が脳死になったのは麻酔によって稀に起こってしまう合併症によるもので、医者のミスや対応の悪さという事では無く防ぎようのない事故だった。だからと言って納得できるかと言われれば当然できる事ではない。盲腸の手術なんて誰もが簡単に終わる事だと思う。リスクがあると言っても、そのわずかなリスクが我が身に降りかかるとは誰も思わない。その事故のあと妊娠が分かった安倍が、アオイのミスにいちいち腹を立てるのは当然と言えば当然の事だ。

ハッキリ誰かが悪いなら怒りの持って行き場もあるけれど、現実にはそうでない事なんていくらでもある。安倍の苛立ちはどうすればいいのか。怒っても怒っても怒り足りない安倍の怒る気持ちをアオイはちゃんとわかりたいと思う。

 

自分も以前手術をした時の説明で麻酔のリスクについて聞いた。数パーセントとはいえリスクがあって、その数パーセント側に自分が入らないとは言えない事が怖いと思った。結局その数パーセントは起こらず自分は普通に過ごしているけど、もしその数パーセントが起こった時に自分は何も恨まずにいられるのだろうか?自信はない。

安倍はこの怒りをどこにぶつければいいのかと問う。病院も医者も悪くないなら誰が悪いのか?仕方なかった、運が悪かったと言われてもどうすればいいのか、怒るのはやめられない。怒り続けたまま子供を育てていくのか?誰も信じられないままに、と。

ミスをして「謝って、もう一度」と言うアオイに「もう一度が許される職場じゃないでしょ」と安倍は怒る。その通りだ。

医者や看護師は一つの経験に出来ても、患者側には次はない。

アオイは安倍の夫の病室の様子を伺う医者を見かける。おそらく担当した麻酔医。彼のミスではなかったとしても彼が責任を感じない訳ではない。その気持ちは救いがあるけど、それでも彼には次があっても、安倍の夫には次はない。

それはどうしようもない。

 

以前読んだ「おたんこナース」という漫画で「恨みながら亡くなった人」と言う話があった。主人公のナースにいきなり「あなたを恨むわ」と言った患者の話。末期ガンで身寄りのないその女性は周りの人全てに怒りをぶつけていた。夫と子供は雨の日のスリップ事故で亡くなり、相手もいないから恨む相手がいない。自分のガンも自分が検診に行かなかったから見つかった時には末期で自分のせい。誰のせいにも出来ないから幸せそうな周り全てを恨んで死んでいってやると言う。

そんな彼女の恨みを一手に引き受けるために、主人公は恋人役を調達し、心ゆくまで恨んで下さいと若くて健康で幸せな自分を見せつけてみせる。

 

その話もそうだけど、現実に起こる辛い出来事で仕方ない事ってたくさんある。そして安倍のようにその怒りをどこかにぶつける事でしか自分を保てない人もいるだろう。だからと言ってぶつけられる側がそれで平気なはずもない。実際、訴訟リスクの高さで麻酔医や産科医のなり手が減っているというのも聞く。でも自分も身内が病気になった時、医者を疑ってしまう気持ちもあった。もっと何とかできなかったのかと。

このどうしようもないモヤモヤを取り上げた、それだけでもこのドラマは意味があると思った。

 

何とか夫が生きているうちに出産した安倍はアオイに脳死状態の夫に赤ちゃんの声は聞こえるのかと聞く。空気の読めないアオイは「医学的にはありえない」と答えてしまうが、そんなアオイを「バカねー」と笑い、「でもあなたは信じられる事が分かった」と安倍は言う。

生まれた赤ちゃんとアオイの不器用さが、きっとこの先ほんの少しづつでも安倍の固まった気持ちをほぐしていくのならいいなと思える終わり方だった。

 

アオイ役の清原果耶は可愛いんだけど口がへの字で、だからこの不器用でわからないながらも産科で起こる出来事をじっと見つめるアオイ役に凄くはまっている。

まだ16歳だけど存在感があって、芝居がまだぎこちないところもあるけれどそれがアオイに重なってなんだか見ていてたまらなくなるのだ。

 

毎回のゲスト俳優もいつもいい。今回の安倍役は田畑智子で安定の上手さだけど、確かこの人現実に今妊婦さんだったんじゃないだろうか?

NHKドラマは撮影全部終わってから放送するから収録は結構まえなのだろうけど、もし自分の妊娠とこの撮影が重なっているのなら、この覚悟をいる役をやれるのは俳優さん凄いなぁと思う。

 

映像も美しくて好きだ。

重いエピソードばかりだけど、視聴後の感じが悪くないのはこの映像の美しさもあるんだと思う。

ちょっと田舎の海辺の産婦人科、季節は夏。この感じがよく出ていて、なんだか懐かしい気持ちになる。本当に普通の街で普通の人に普通に起こる出来事なんだなぁと感じられるから。

CHARAの主題歌がやさしくてぴったりで、それも重いエピソードを和らげてるのかな。

 

 

が、ハードディスクがポンコツで毎週予約が少ししかできず、なぜか何度消しても毎週録画する番組があったりと使えない。

4話の録画を忘れてしまい、しまったー!と思ったけど、そうだ確か火曜深夜に再放送してるはず!と録画予約したら台風情報で放送中止。

くーっ!あ、でも水曜に改めてやるし、と思ったら消したはずの録画予約をまた録画していて残量がなくなり、第4話は5分しか撮れてなかった……マジかー💧

悔しい……。

4話もまた、どうしようもない、でも取り返しのつかない出来事の話。出産というのは簡単な事ではないのだと突きつけてくる話だった。

昨日の第5話はちゃんと撮れてたから間違えて消さないうちに見なくては!

 

決して明るくてワクワクして楽しい!ってドラマではないけれど、答えの出ない問題に誠実に向き合っていて目が離せない。

この先もちゃんと全部見るつもりです。