温泉とテレビが好きな私の日記

誰かに気を遣うことのない、思った事をそのまま書いてみるところ。

「恋する母たち」全9話完走~  ベテランコンビの筆力は伊達じゃなかったわ

今クール多かった恋愛ドラマの中ではグッと大人仕様の「恋する母たち」。
普段ならあまり興味の無いタイプのドラマなんですが、「阿部サダヲがすごくいい」というつぶやきを見かけてみてみることに。
いや~、それは間違いなかったです。


原作・柴門ふみ、脚本・大石静、という「えっ90年代??」と突っ込みたくなるようなベテランコンビ、決して作風は好みではないのですがそれを物ともしない引き込み力はさすがだった。
最近はほとんど読んでないですが、一時期は柴門ふみのマンガをそれなりに読んでました。この人の恋愛観というのがわりと独特で自分は全然感情移入は出来ないんですよね。なんだけどなんだか「ある」と思わせる人物造形が面白みなんだと思います。
その点では大石静もおんなじで、2018年に大ヒットした「大恋愛」も、全然共感はしないんだけど、力技がすごくてついつい見てしまう。
そんな2人の組み合わせなのだからそりゃ~パワーに負けますって(笑)

2人の共通点は「意思のあるヒロイン」ですかね~、やっぱり。すごく90年代っぽい。

恋愛でいろいろ迷っても、結局は自分で決めて自分で行動する。自分にある欲望も隠さない。こういうヒロインだからイライラしなくて、共感しなくても「なるほど~、そうくるか」と傍観者としてドラマが楽しめる。
今回の原作は未読なのですが、出てくるキャラがいかにも柴門ふみっぽいのを大石静が上手く出していて、ベテランの技はさすがだと思いました。

 

ヒロイン3人のバランスもいかにも柴門ふみ木村佳乃演じる杏は「美人で真面目で融通が利かないちょっとガサツ」、吉田羊の優子は「眼鏡バリキャリ、実はフェロモン系」、仲里依紗のまりは「ちょいおばかでいつまでも若くかわいい」とバラバラ。

息子が同級生ということで友人になるというつかみはベタだけど、実際それくらいしかここまで環境の違う人が知り合う機会はないよね~。

 

男性陣もいかにも柴門ふみで、小泉孝太郎の斉木がまずそれっぽい。顔が良くて無神経ってキャラ。あと行く先々で女が出来てしまう、杏の元夫・石渡もよく出てくるパターンのキャラだ。
磯村勇人の赤坂とか優子の息子とか、やたら頭のいいキャラがでてくるのも柴門ふみ的だし。こういうキャラが好きなんだね~っていうのがとてもよくわかる。


こういう「柴門ふみ要素濃縮」でくどくなりそうなところを、演出のテンポの良さとキャストの好演で見やすくしていた。
おっしゃるとおり阿部サダヲがめちゃくちゃいい。女たらしの落語家という役で、一瞬「いだてん」を連想したのに、瞬時にかき消す色気駄々洩れ具合がすごい。
あとは吉田羊が。この人達のキャラによっての色気の出し入れ具合がほんと謎。俳優ってすごいわ。

 

話の展開は、それぞれ高1の息子がいる3人の母が、夫以外の人と恋に落ちるわけですが、びっくりしたのは結局最後、それぞれの形とはいえその相手とハッピーエンドになるところ。これは原作でもそうなのかしら?すごく今っぽい。
今っぽいというのは、ほめてるというより「逃げたな」と言うこと。
一応「不倫ドラマ」で、今はドラマにも倫理を求める融通の利かない人達が多くて、「不倫ドラマ」ということだけで叩かれるということがある。
それを「運命の愛」っぽくして決着つけるのが「落としどころ」なんだろうけど、3組も出して全部上手くいかせてしまうのはなんだかあっさりしていて逃げっぽい気がする。3人のヒロインのそれぞれの相手役男性3人が、最初は女たらし的に出てきて実はヒロインに一途なところとか。
まあ、じゃあどうしてほしいの?と言われればわかんないんだけども。

あと9話で時間が足りなかったのか、後半の展開が飛ばし気味でしかもあっさりだったのが残念。3人も書くのは厳しかったかな~。
恋する『母』たちな割に、母として恋愛する自分と子供との自分をどうバランスとるのかが見たかった。息子が高校生で、確かに母親が一人の女性だと言うことをわかるくらいには大人になってきているのはわかるんだけど、その一方で思春期でしかも母親とは異性の「息子」であるからこその関係がもっと描かれてもよかったのになぁ~とも思う。いまどきっぽいのかもしれないけど、息子3人とも物分かり良すぎてちょっと物足りない。
優子の息子がゲイで、杏の息子のことを好き、というエピソードも取ってつけたようで。せっかく3人の息子役の子たちがいい感じだっただけに残念。
後は、まりの夫の不倫相手ののり子が、演じる森田望智が上手すぎて面白かったけど、このキャラの扱いも後半放り投げてしまって、いかにも展開のためのコマになってしまってた。

 

と書き込み不足で気になる箇所はたくさんあったけど、上手い俳優が存分に演じてて、そうやってちゃんと作ってくれると、1ミリも共感しない恋愛ドラマでも充分おもしろく見れるんだなぁ~と感心しました。

ドラマって共感がなくてもおもしろい、といういい見本になったと思います。
毎週楽しかったです。お疲れ様。