温泉とテレビが好きな私の日記

誰かに気を遣うことのない、思った事をそのまま書いてみるところ。

「燃えよ剣」 「青天を衝け」を見ていてよかったなぁ〜

11月3日、文化の日

久しぶりに映画館で映画を見ました。

やーっとビールも買えますよー(笑)

 

見てきたのは「燃えよ剣」。

関ヶ原」に続く、岡田師匠の時代劇シリーズです。

関ヶ原」は見てないのですが、レビューでは「セリフが聞き取れない」とか「展開が早すぎてわかりにくい」というようなのがありましてこちらはどうかしら?とちょっと心配。

でネタバレありで思ったことをつらつらと。

 

そこそこ混んでいて、男性の1人客多し。さすが土方。

時代劇にありがちな画面の暗さとかはありますし、セリフも大量で早口。でも訳がわからないということはなく2時間半という長さも感じずあっという間でした。なかなか楽しめた。

ですが、映画として面白いのかこれ?という疑問が浮かぶのも確か。

それはなぜかと言うと第一に予備知識無しで見たらおそらくついていけないからだと思います。

まあ予備知識と言っても、自分の場合は大体見ていた「新撰組!」と「銀魂」によるものなんですけどね(笑)

そしてそもそもこの映画を見ようと言う人で新撰組について全く知らないと言う人はまあいないでしょうし。ただ圧倒的に知名度のある、土方、近藤、沖田くらいの知識では厳しいですね。清河八郎くらいまではわからないとついていけない。自分は「新撰組!」を見るまでは超有名人のその3人くらいまでしか知らないほど興味なかったので、ある程度の歴史好きはやはり基本なのねと思いました。

 

箱館戦争の合間、フランス人記者にこれまでの事を土方が語るという形式ではじまる。

まずは日野でのバラガキっぷりと、試衛館での近藤の婚儀でメインキャラが登場。

基本的に名前のテロップが出ないので原田?どの人??と追うのにワタワタ。

土方、沖田と最初から一緒の爺さんがいて「誰?」と思っていたらだいぶ進んでから「源さん」と呼ばれていて「え?これが井上源三郎??」とびっくり。歳上だとは思ってたけど、こんなに上の人?

とにかく予備知識ないとついていけず。

ダイジェストのごとくさくさく進んで、有名な粛清事件があったり、池田屋があったりと進むのですが、そもそもその事件が新撰組にどういう影響を与えたのかが描かれないので、エピソードを時系列で羅列してるだけに見えてしまう。

そして土方の近くから沖田が外れ、原田が外れ、斎藤が外れ、近藤が外れ…と仲間を失いながら北上し五稜郭までたどり着いた時、土方に残ったのは京都で出会ったお雪だけだった……って、純愛物語なの⁉︎

いやそもそも、クライマックス前でお雪と情を通じるシーンがあるんですが、その時まで身体の関係はなかったように描かれてるんですよね。思わず「うそつけー!」と心でツッコミましたよ!土方歳三ですよ?

うーん、お雪に対しては誠実だったと描きたいのかもしれないけど、だったら対比として女に派手な所を描いとくべきでは?この映画を見てる人は土方について知ってる訳だし、そんなきれいきれいにいまさら描かなくてもわかるでしょうし。

そもそも、原作にお雪って出てくるのかしら?

 

実は「燃えよ剣」の原作持ってるんですよね。何年か前に本屋で見かけてなんとなく買ってみた。分厚い文庫本の上下巻。

で、上巻の前半くらいで止まってたかな?(笑)多分京都には来てた。

今回の映画を見ようと思った時、なぜ本を買ったのかなと思い返してました。

多分、なぜこんなにみんなが土方歳三を好きなのかを知りたかったんですね。

銀魂」が大好きなのですが、作者の空知先生が歴史上の好きな人物というと「坂本龍馬土方歳三」と挙げてるんですよ。

で、このあたりの人気って司馬遼太郎が作ったものですよね。

そして、自分の父親が司馬遼太郎を好きだったんです。子供の頃、国語の教科者に司馬遼太郎の文章があって、「これお父さんの好きなやつだ」とわざわざ見せた記憶があります。喜んでもらえるかなと思ったんですね。

そういう事があって、自分がいまいちピンと来ない土方歳三の魅力というものを知りたかった。

しっかり小説は脱落してたので、では映画ではどうだろう?と思ったんです。

 

正直、話題になった「青天を衝け」の町田啓太の土方があまりにかっこよくて、岡田土方に最後まで馴染めなかった。

土方ファンの友人に言わせると「町田土方はかっこ良すぎる。『新撰組!』の山本耕史がベスト土方だ」とのことですが、自分は「銀魂」が好きなもので、町田土方がここ最近の土方では圧倒的に好きで。

町田土方のシャープさというかスタイリッシュな感じが岡田土方には全く無く、それは「燃えよ剣」の土方としては正当なのかもしれないけれど、「あのみんなが大好きな土方歳三ってこんななの?」と思ってしまったのは確か。

もちろん町田土方は、同じ武州の農家の出で、同じく時代の流れに乗って武士になった栄一との真逆の生き方の対比としてのかっこよさなのはわかるのだけど、それでも土方はこうあって欲しいという期待に見事に答えていたと思うんですよね。

土方の泥臭さや影の部分により過ぎて、かっこよさが岡田土方には足りなかった気がする。

それはもちろん原作の世界観を知らない自分が思った事なので、原作の土方はこうなのかもしれないけれど、わざわざ映画にするのなら絵面での説得力は欲しい。

ここでどうしても岡田師匠の見た目のハンデが気になって。

江戸へ向かおうとする近藤を止める土方。

どでかい近藤鈴木亮平を引き止める岡田土方はまるでワンコがまとわりついているよう…。

つくづく俳優のスペックとして見た目は大きいなと思う。

 

今回映画を見たのはキャスティングが興味深かったのもある。

斎藤一松下洸平なのですが、撮影時はまだ「スカーレット」の前で、岡田准一鈴木亮平が「この映画で松下洸平が『見つかっちゃうね』と言っていたら、その前に『スカーレット』で見つかってしまった」とインタビューで言っていた。

なので楽しみにしていたのですが、さほど目につかず。そもそも尺的にキツキツなのでメイン3人以外はさほど描かれないし、斎藤一って目立つエピソードがないのかも。

それよりも藤堂平助のはんにゃ金田と山崎丞のウーマン村本の使い方が面白かった。

芸人俳優って使い方によって毒にも薬にもなるけれど、どちらも本人の特徴や特技を上手く使っていて、特にウーマン村本はいい感じにアクセントになってて良かった。

 

斎藤一松下洸平もなんですが、伊東甲子太郎役が吉原光夫で後に朝ドラで話題になる人をキッチリ見つけてくるのがキャスティングセンスあるんだなぁと感心した。ちゃんと吉原光夫には歌うシーンもつけてるし。

それだけに駆け足展開がもったいない。とにかくこれだけの人を出しても描き込む尺がないんですよね。

 

新撰組の出来事としてはざっくり知ってても、「青天を衝け」を見ていると改めてわかる面白さが色々あった。

青天の渋沢はフットワークが軽くて、いい意味でプライドなく時代に合わせて立ち位置を変えて結果成功していくのが面白く、そういう人物を時代物の主人公にしてるのが珍しい。

今まではどうしても何かにひと筋な人物が描かれがちだったし。

燃えよの土方はその、時代物王道の不器用に一途な主人公で、「青天〜」を見てるとそういう人物、たとえば西郷がすごく愚かに思える。

この段階で金かけて戦争するなんて、とかね。

でも「燃えよ剣」を見てると、時代の変換で放り出されてしまった士族にはそうするしかなかったのもよくわかる。

歴史がそれぞれの立ち位置で全然違って、それはどちらも間違ってないというのをちゃんと知れる。

「青天〜」では慶喜が先を読んだクレバーな人物として描かれるけど、「燃えよ剣」では割と従来の小物的な描かれ方で、慶喜という人物の立ち位置や解釈の難しさが面白いなぁと思った。

一方ついつい「青天〜」と比較して心の中でつっこんでしまう箇所も多かった。

松平容保役が尾上右近なのですが、「青天〜」では孝明天皇役で、「燃えよ剣」での坂東巳之助孝明天皇とのシーンで「座るとこ違うだろ!」とひたすらつっこんでしまう。

余談ですが、天皇の役って「麒麟が来る」の玉三郎様とか梨園の人が多いですよね。

やっぱり所作とかがきっちり仕込まれてるのが違うのかしら?

 

函館にたどり着いたお雪が救護所で手伝いをするのだけど、そこの医師が「敵味方区別なく治療する」と言っていて、「お、これは高松凌雲ですね。『青天〜』で見たぞー」と嬉しくなったのですけど、同時代の時代物を複数見るのは、解釈や立位置の違いを比べながら楽しめて面白いなあと思います。

朝ドラで戦争前後の話が多いのでついつい比較して楽しんでしまいますが、史実ベースの歴史物はそういうところがさらに楽しい。

歴史好きの人ってこういうことを楽しんでるんだなぁと。情報の補完をしあえるのもいいですね。

 

あと、忘れてはいけないのは山田涼介だった!

素晴らしい沖田です。

駆け足なので沖田も思ったよりは出番多くないのですが、飄々としてでもちょっと儚げで、幼さも残る沖田総司を作り上げていて、改めて俳優としての底力を見せてくれた。

そして沖田らしいシャープな殺陣がかっこいい!これは殺陣師岡田の腕もあるんでしょうねー。

つくづくアイドル顔で損してるけど、もっと俳優として評価されて欲しい!

 

全体として長さも感じず楽しめたけど、土方歳三という人物の魅力が伝わったかというとちょっと物足りないかなー。

でも、無骨さというか不器用さのある土方が人気なのはやっぱりわかる。

斎藤一新撰組を抜けた後、なんだかんだで明治には警察官になって子も孫もできて天寿を全うしたと知った時、自分はなんかがっかりしたんですよね。

まあ現実はそんなものだし、それは責めることではないけれど、物語的にはやはり美しく散って欲しかった。それだけの事をしたのは確かだし。

だからこそ、土方の物語的美しさに惹かれるものなんだろうなーと。

すっきり快作!とはいきませんが、これをきっかけにもっと土方や新撰組や幕末という時代を知りたいというきっかけにはなると思います。

ますます「青天を衝け」が楽しみですしね。