温泉とテレビが好きな私の日記

誰かに気を遣うことのない、思った事をそのまま書いてみるところ。

「anone」第4話 るい子の哀しみとは

4話はるい子(小林聡美)のターン。
持本(阿部サダヲ)の店にふらっと立ち寄り、意気投合して一緒に死に場所を探す。
一方で亜乃音(田中裕子)の持っていた札束に執着し、皆を騙して一千万を持ち逃げする。
彼女の謎の行動の意味は?……

なぜかるい子のそばにいる、セーラー服の少女アオバの語りから始まる。アオバはるい子にしか見えない、生まれてこなかった娘。
……正直、ここでもう「ヤバイ💧」と思った。
「わけがわからない、難解、と視聴者脱落」と記事に書かれ、着々と視聴率が下がっているというこのドラマ。自分は好きなんだけどなー、また飛び道具使ってきたなぁ、また叩かれちゃうなー…と心配になったのだ。
が、それは不要な心配だった。
4話は今までで一番ストレートな「女性」の話だった。

親に愛されず捨てられたハリカ(広瀬すず)や子供が出来ず婚約破棄をされたり、店を取られ余命宣告をされた持本のような重い過去と比べると、るい子の人生は一見普通だ。
学校を出、就職して働き、結婚して専業主婦になり息子を産む。夫の経済力もあるようだ。唯一、予期せぬ妊娠で死産したという傷はあっても、人によってはとても幸福な生き方に思える。
けれど、それはいつもるい子の望まないものだった。
野球をやりたくても女子はマネージャーにしかなれず、バンドマンになりたくても、バンドマンの彼女にされて妊娠、仕事をやってもやっても女性に出世の道はない。
初めて持本の店に来た時「女が出世出来ない会社に火をつけ服役した」という嘘をついていたけど、きっとそれは彼女の中では嘘ではない。専業主婦の生活はるい子にとっては服役でしかなかったのだろう。
夫も姑も別に悪人でもない。ただるい子とルールが全く違うのだ。「男社会」のルールで生きられる夫や姑と、生きられないるい子。だからこそ絶対に歩み寄れない。
たった一人の味方のはずの息子も、夫達のルールで育ち、るい子のルールは受け入れない。
そんな「服役生活」に限界が来て、るい子は家を飛び出した。
母親として息子を取り戻すため、お金を手に入れようとするるい子。
でも結局息子は向こうのルールを選び、るい子を捨てる。

…ありがちと言えばありがちな、男社会でもがく女性の話だった。なのになんでこうも刺さるのか。他人から見れば何の問題もないように見えるからこそ、るい子の苦しみは理解されない。だから産まれなかった娘しか支えにならなかった。それくらいるい子は独りだった。びっくりするくらいストレートな話に泣きそうになった。
どうしてもどうにも出来ないことってある。解決法はわかっていても、それを出来るかというと別なんだ。出来ない事は辛いけど、でも出来ないものは出来ないんだよね。

一方で亜乃音(田中裕子)は失踪したままだった娘の玲(江口のりこ)と対面する。けれどキッパリ拒絶される。今のところ、亜乃音が玲に拒絶される理由は「血の繋がりが無い」という事しか視聴者にはわからない。何年も育ててもただ血が繋がらないというだけで娘に捨てられた。そして娘と血が繋がっている夫は亜乃音の知らないところで娘と会っていて、それを詰ろうにももういない。

親に捨てられたハリカ、子供に捨てられた亜乃音とるい子、子供を持てない持本。
このドラマはやっぱり母と子の、親と子の話だ。 みな「血の繋がり」による家族を持てない人間ばかり。
悪人でもなく、ただ上手くやれないだけだったり、ちょっと馬鹿だったりしただけだ。上手くやれない事ってそんなにダメなことなんだろうか?それだけでこんなに孤独にならなくちゃいけないのだろうか?
見ていてだんだん辛くなる。亜乃音がハリカを家に入れるのも、持本がるい子に好きだと言うのも唐突に見えるけど、他にいなかった、同類だからなんだよね。
「何が言いたいかわからない」とかボロクソ言われたりしてるけと、4話かけてそれぞれの孤独を描いてきた。だからすんなり飲み込める。
ちゃんとドラマは繋がってる。

そんな4人とは別に、いまだ謎の行動をとる中世古(瑛太)。
1話からの細かいエピソードの羅列で、偽札造りに執着しているのはわかる。雑然とした暗い部屋で一人黙々と作業をする。一見他の4人のように孤独に生きているのかと思わせる。亜乃音に「お子さんは男?女?」と聞かれても答えない。産まれてないのか?別居なのか?と想像させる。
が、中世古には普通に帰る家庭があった。妻と娘がいて、「結局ここに帰るのか」と中世古はつぶやく。
そしてシングルマザーの玲が亜乃音に言った「再婚するから。子供の面倒も見てくれる人だから」という相手もまた中世古だった。
4人と同種の孤独な人間と思わせた中世古には家庭が2つある。一体目的は何なのか?何をしようとしてるのか?全然わからない。先を見ない訳にはいかない。

今、テレビドラマはわかりにくいと敬遠されるという。集中して見ないとわからないのは疲れるそうだ。繋がってると途中参加しにくいから1話完結が好まれるとも聞く。
わかるけど、でも、1時間目を離せないのって楽しいと思うけど?「この先どうなるの?」とドキドキして次週を待つのも楽しいでしょ。
そしてこのドラマ、そんなに分かりにくいのかな?当初「カルテット」っぼいと思ったけど、それよりずっとストレートだ。
見てて辛いけど、先が気になる「ザ・坂元裕二」ドラマ。
まあ、視聴率悪いのはそうだろうねーとは思うけど(笑)
面白いよ。