温泉とテレビが好きな私の日記

誰かに気を遣うことのない、思った事をそのまま書いてみるところ。

安田さん、おしんは耐える女じゃないですよ

橋田寿賀子先生がお亡くなりになりました。

享年95歳。ご冥福をお祈りいたします。

確か令和に入ってからも「渡鬼」の新作やってましたよね?つくづく凄いなぁ。正に生涯現役でしたね。

で、考えてみたら自分は橋田先生のドラマをちゃんとみたのは「おしん」だけでした。

おしん」は一昨年の再放送で見たので、橋田先生のことは大御所と思いつつも最近まで作品はみてなかったんですね。

ただ記憶にあるのが、かなり昔に定食屋さんでご飯を食べていたら置かれているテレビで「渡鬼」が始まって、何となく眺めていたら目が離せなくなった事があって。

「嫁姑争いのドラマなんて」とまるで興味がなかったのに見てると引き込まれる、橋田先生凄いなぁと思ったのです。

そしてその凄さを「おしん」で存分に思い知るわけですね。
登場人物の誰一人に対しても共感は全然ないのですが、それでも見ずにはいられない、それだけキャラクターひとりひとりに力がありました。
おそらく「渡鬼」や大河ドラマなどもそうなのでしょう。

先日、ネットニュースを見ているとこんな記事が。
サンデーモーニングで橋田先生の追悼特集をやった際、コメンテーターの一人のフォトジャーナリストの安田菜津紀が橋田先生のドラマを否定するようなことを言って、「追悼で言うことじゃない」と非難されているというもの。

なんか違和感あるなぁと思って、全番組録画されている「サンデーモーニング」を見てみた。

 
他の高齢の男性コメンテータ陣がオーソドックスなコメント、主に「おしん」が海外でも人気という面に触れる中、最後にコメントした安田氏は
「イランでも『おしん』は人気で『日本人はあんなに我慢強いのか』とよく言われる。橋田さんの描いた時代は今より女性が家に縛られる苦しみが深かったと思うので、これからは耐え忍ぶということを美徳にするのではなく多様な家族の在り方を選べる社会を築いていきたい」
といった内容のコメントをした。
そして確かに関口宏はこのコメントに対してちょっとなぁというリアクションだった。

だけどね~……。

 

別に追悼の場だからって、無理に故人をほめそやす必要はないと思うけど、がっつり「おしん」を見た人間から言わせてもらえば、安田氏のコメントは追悼にふさわしいとかいう以前に的外れ。あきらかに「おしん」の内容を知らないで言っている。
だって「おしん」は耐え忍ばない女だから。

 

確かにイランとか外国人からすると、「おしん」は耐え忍ぶように見えるけど、それはおしんが女性だからではなく、当時の貧困層としては当然のレベル。
イランの人が驚くのは国民性と時代性の違いと思われる。

そしておしんは勤勉な努力家だけれども、理不尽なことにじっと耐え続けたりしない。
決してあきらめずに時をうかがい、そこを離れ自分の思うようにやったから成功があったのだ。
確かに女性が虐げられた時代で、虐げられ不幸になった女性がたくさん出てくる。
製糸工場の過酷な労働で体を壊し若くして亡くなったおしんの姉はる、家を継ぐために好きでもない男を婿に迎えその男がぼんくらだったために家が破滅したかよ、姑のしごきにひたすら耐える兄嫁の恒子、そして貧乏のなか働きづめの祖母なかと母ふじ。
そんな時代に悲しい女性たちを反面教師にして、おしんがのし上がる物語だ。

おしんは耐え忍んで亡くなった祖母の人生にはっきりと疑問を抱いている。
海外で人気が出たのも、貧しい出のおしんが己の才覚のみを武器にしてのしあがっていく姿が痛快だからだろう。
安田氏のラジオはたまに聞いていたし、子供の貧困等の取材テーマはけっこう興味をもっているけれど、この件に関してはいただけないなぁ~。

まあ、もっとも他の男性陣もコメント聞く限り、「おしん」の内容については 知らないだろうなという感じだけども。

 

そもそも、橋田先生がどのようにして今の立場になったか考えれば、「女性が耐えるのが美徳」なんて話を書くわけがない。
終戦後間もなく映画会社に入ってるのだ。「女だから」というだけでどれだけのことがあっただろうか、簡単に想像がつく。
結婚しても仕事をしてたのもあって姑との折り合いも悪かったそうだし、そんな状況で生涯書き続けてるのだ。まさに女の自立を成し遂げた人生じゃないか。
現代から見てのおしんの欠点はワーカホリックとしか思えない点で、それはこの時代の貧しい出の人間が成功するにはしかたのなかったことだ。
おしん」は紛れもなく傑作のエンタテイメントなので、仮にもジャーナリストが内容も把握せず否定するのは納得いかないな。
橋田先生にも失礼だ。

まあ、自分もちゃんと見るまではおしんが耐えるドラマだと思っていたし、そう思ってる人多いでしょう。

けれども、安田氏はジャーナリストですからね。イメージで話しちゃいけないですよね。

安田氏は女性の人権等についてもよくコメントしているからこそ、「おしん」をちゃんと見て、橋田先生の人生に思いを馳せてみるべきだと思いますよ。